「不適切統計「調査中」繰り返す厚労省、統計委員長が批判」

amamu2019-01-18

 以下、朝日新聞デジタル版(2019年1月18日17時18分)から。

 総務省の統計委員会は17日に急きょ会合を開き、厚生労働省の担当者に毎月勤労統計をめぐる問題の経緯をただした。ただ、厚労省側は「調査中」との回答に終始。大混乱を招いた当事者の情報公開に消極的な姿勢に、委員から批判の声が相次いだ。

 統計委は、政府の「基幹統計」の調査手法を審議し、「お墨付き」を与える役割だ。毎月勤労統計も対象だが、厚労省は全数調査がルールの大規模事業所について、2004年から東京都分の対象を3分の1ほどに勝手に絞っていた。

 この理由について、委員らが「もともと全数調査ができていなかったからか」「人手が足りなかったのか」と質問。だが厚労省の大西康之政策統括官は「当時どういう議論があったのかは調査中」と繰り返した。

 18年1月分からは全数調査に近づけるデータ補正の「復元」をしていた。「復元には準備期間も必要なはずで、組織で認識していたように思える」と指摘されたが、大西氏は「一部の職員は認識していたが組織全体では共有していなかった」と従来通りの回答だった。さらに「抽出自体がおかしいが、17年まで復元もしなかったのはなぜか」と問われると、「どう説明していいか私もわからない」。

 複数の委員が憤ったのが、データ補正の結果、賃金がどれだけ上がったかを聞いた場面だ。18年8月の統計委でも議論されたが、厚労省側は補正の事実を伝えていなかった。「実額だけでもこの場で示すのが礼儀だ」「(補正の)計算が終わっていればただちにわかる話だ」と詰め寄ったが、大西氏は「(資料を)手元に用意していない」と最後まで示さなかった。

 委員から「統計作成のプロセスが(省内でも)ブラックボックス化しており、対外的に全く発信されていない」との指摘も。委員の川崎茂・日大経済学部特任教授は「毎月勤労統計のホームページを見ても、ほとんど(不正に関する)記述がない」と批判。厚労省側が「統計ユーザーに説明が少ない点は申し訳ない。すぐに着手したい」と応じる場面もあった。

 統計委の西村清彦委員長(元日本銀行副総裁)は終了後、「現時点では十分な情報提供があるとは言いがたい。猛省を求める」と厚労省を厳しく批判した。統計委は今後、東京都分の全数調査を速やかに始めることなどを求める意見書を根本匠厚労相に提出する。(村上晃一、別宮潤一)

統計委員会が指摘した主な問題点と委員からの意見

【問題点】

・「お墨付き」を与えた調査手法に従わなかった

・不適切な抽出調査をし、その復元処理すら怠った

・統計委に指摘されるまで問題を公表しなかった

・不正確な調査結果の発表を続け、データ利用者を誤解させた

【意見】

・復元処理は昨年1月分から始まった。組織で不正を認識していたと思う

・復元処理の開始を一部職員しか知らなかったなら組織統治に問題がある

・統計委で長く審議していたのに、裏切られた気持ちだ

・公的統計の信頼を揺るがす前代未聞の事件だ