以下、朝日新聞デジタル版(2020/2/5 5:00)から。
「桜を見る会」前日に行われた安倍晋三首相の後援会が主催する夕食会について、ホテルと契約したのは誰か――。4日の衆院予算委員会でも論争は続いた。首相は「契約主体は参加者個人」として政治資金収支報告書の不記載の正当性を訴えるが、専門家は「民法上、契約したのは首相の事務所では」と疑問視する。
この日、立憲民主党の黒岩宇洋氏が「開いた口が塞がらない」と批判したのは、首相が最近、口にした不記載が問題ないとする理屈だ。会場となったホテルと夕食会の契約を交わしたのは後援会ではなく、約800人の参加者個人というもの。「後援会の収支は一切無い」との答弁とともに繰り返している。
黒岩氏はこの理屈に照準を合わせた。「事務所が(夕食会の)予約をした」と明言する首相に「予約したのが安倍事務所だからホテルが安い5千円に設定したのでは」と迫った。首相事務所がホテル側と交渉して価格設定に関わったのならば、事務所がホテルと契約したことになるのでは、との疑問だ。
首相は「仲介したのは事務所」「紹介者の信用はある」と説明。「安倍事務所の関係者の方々であれば問題ないだろうという判断だったんだろう」と事務所の関与が価格設定に影響した可能性を認めた。3日の審議で首相は、2013年以降に二つのホテルで開かれた7回の夕食会の会費が、「いずれの年もすべて1人5千円」だった、と明らかにしている。
黒岩氏はさらに、実際の出席者が減った場合も、予約人数分の金額を請求すると定めたホテルの規約があることを紹介。そのうえで、会の中止や参加者の欠席があった場合、「首相の事務所、後援会、ホテルのうち、どこがリスクを負担することになっていたのか」と尋ねた。首相は「取り決めは特段、行われなかった」と述べ、中止などの際に生じるホテルの損失をどう埋め合わせるかは決めていなかったとした。
契約をめぐる首相の一連の主張について、浜辺陽一郎・青山学院大教授(民事法)は「事務所が予約(ポイント①)しているため、ホテル側から価格の優遇を受けている。それに、事務所が夕食会の会費を集金(同③)している。明らかに事務所が契約の主体で、首相答弁は詭弁(きべん)」と指摘。「事務所の募集(同②)に応じて、参加者が実際に申し込んだ相手も事務所。『ホテルと個別に契約したものであずかり知らぬ』という説明は矛盾している」と批判した。(永田大)