以下、朝日新聞デジタル版(2020/11/25 5:00)から。
安倍晋三前首相の後援会が「桜を見る会」の前日に主催した夕食会をめぐり、安倍氏側が2019年までの5年間に、費用の不足分として総額約916万円を負担していたことが、関係者への取材で分かった。支払いを受けたホテル側が発行した領収書の宛名が、安倍氏が代表を務める資金管理団体「晋和会」だったことも判明。東京地検特捜部は、安倍氏側が不足分を補塡(ほてん)していたことを示す証拠とみて、政治資金規正法違反(不記載)にあたるかどうかを調べている。
夕食会は、安倍氏の公設第1秘書が代表を務める「安倍晋三後援会」が主催。地元支援者らを招いて、13~19年に年1回、都内のホテルで1人5千円の会費制で開いた。
関係者によると、同法違反(不記載)罪の時効(5年)にかからない15~19年のそれぞれの費用総額は約407万~約634万円で、増加傾向だった。一方、各年の参加者は450~750人規模で、集まった会費の合計は約229万~約384万円だった。
各年の不足分は約145万~約251万円で、安倍氏側が負担していたとみられる。ホテル側はそれぞれの年に、不足分の支払いを受けた金額の領収書を安倍氏の資金管理団体宛てに発行していたという。
資金管理団体は、政治家が一つだけ指定できる。公表されている晋和会の15~18年の政治資金収支報告書には、夕食会の支出に関する記載はない。
特捜部は、ホテルの領収書や夕食会の明細書などを元に、公設第1秘書や後援会関係者から複数回にわたり任意で事情聴取した。安倍氏側が負担した経緯やその原資のほか、晋和会などの政治団体の収支報告書に収支を記載すべきだったかを調べている。
安倍氏は国会などで、夕食会の費用について「ホテル側が設定した額を参加者が支払った」と安倍氏側の負担を否定。「事務所や後援会の収入、支出は一切ない」と述べ、収支報告書の記載も不要とした。明細書についてはホテルから発行がなかったと説明した。
問題をめぐっては、弁護士らが5月、安倍氏や公設第1秘書らを地検に告発した。規正法違反のほか、公職選挙法が禁じる選挙区内の寄付に当たると訴えている。
夕食会の費用総額と、会費・補塡(ほてん)額の内訳
※千円単位は四捨五入※関係者取材に基づく
費用総額 会費 安倍氏側の補塡額
2015年 427万円 270万円 157万円
16年 407万円 229万円 177万円
17年 427万円 241万円 186万円
18年 448万円 304万円 145万円
19年 634万円 384万円 251万円
合計 2343万円 1428万円 916万円