「降らない雪、凍らない池 冬季五輪の競技者いなくなる?」

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 以下、朝日新聞デジタル版(2020年5月4日 10時00分)から。

 拝啓、運動好きの方々へ。ある日、知人から言われます。「5年後、大好きなスポーツが同じように楽しめないかもしれない」。突然、そんな言葉を投げかけられたら、信じられますか。私は懐疑的でした。現場を見て回るまでは。伝統競技、人気競技でも、気候変動による異変はスポーツの現場でも起きていました。

 あまりの大声に自分がビックリした。
「うわ。すごい、すごい」
 3月11日、仏南東部モンクラールのスキー場。午前8時過ぎに標高約2300メートルから見た南アルプスの山岳はうわさ以上の景色だった。澄んだ青色の空が迎えてくれて撮影には絶好の日和だ。自然にテンションが上がっていた。
 想像以上のリアクションだったのか、案内役のアラン・キェーヴさんはククッと笑っていた。気を取り直すと、右手で山を指した。「白と緑色の境目が見えるだろう。これが南アルプスの積雪の状況だ」


 スポーツ現場における気候変動の影響を取材したいと決めたとき、冬の山は避けられないテーマだった。温暖化で気温は上昇し、各地で降雪量が減っている。十何年も前からずっと議論されている問題だ。
 「気候連合」が2018年に公表した、英国のスポーツへの影響をまとめた報告書「ゲームチェンジャー」では、今世紀末までにアルプスの山岳地帯の気温は2~4度上昇し、標高1500メートル未満では降雪量が70~100%減少する見通しを出している。中でも大打撃を受けるのが、ドイツやスイスなどの標高1千メートル未満のスキーリゾートだ。雪不足で、冬季シーズンは通常より開始が約1カ月遅くなり、最大で約3カ月早く閉まる可能性も伝えている。
 リゾートの経営難は、スキーやスノーボード人口に直結する。長期的な視点から見れば、競技の将来をも脅かす深刻な事態だ。

 

 (後略)

 

 (遠田寛生)