「パウダースノーなら東北へGO 欧米のスキー客に大人気」

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 以下、朝日新聞デジタル版(2020年2月26日 10時00分)から。 

国内のスキー人口が減少する中、東北のスキー場が新たな形で事業を再生させようとしている。林間コースで新規需要を開拓したり海外からのインバウンドを呼び込んだり。スキーリゾートの活性化は観光面での東北復興につながると期待も膨らむ。
 岩手県北上市和賀町の夏油高原スキー場。今年も樹林の中を滑走する「ツリーランエリア」がオープンした。神奈川県大和市から来た会社員樋渡英司さん(44)は「どこも雪不足だけど、ここはパウダースノー。しかもすいている。穴場ですよ」。
 市の第三セクターとしてオープンしたのはスキーブームが去る直前の1993年。97年に26万7千人だった来場客は、東日本大震災があった2011年には5万9千人に激減した。13年には運営する民間企業が赤字で撤退し、廃止の瀬戸際だった。

 廃止すれば国有林の原状回復などに24億円かかる。「地域経済のため」と公設民営による存続を選択した北上市に手をさしのべたのが、スキー場再生の実績がある長野県白馬村の「クロスプロジェクトグループ」だった。着目したのは同スキー場の「豪雪」。「一冬で累積20メートル以上の降雪があるうえ、強風で常に『新雪』にリセットされる。これは強みと気づいた」と、グループ傘下で運営に当たる北日本リゾートの菅原三多英(さだひで)社長。
 15年冬に国の許可を得て自然林を滑るツリーランエリアを開設、その後9エリア90ヘクタールに拡大したところ、「パウダースノー」を求めるファンの間で「甲信越ニセコ(北海道)より競争率が低い」と評判になり、11万人台の来客を維持している。ゲレンデ直結の宿泊施設も整備し、1シーズン約6千人の豪州や台湾などの海外客が利用する。かつて客の9割が県内だったが、今は3割が県外や海外だ。「将来は20万人が訪れるリゾートにしたい」と菅原社長は意気込む。
 21コース総延長43キロを有する国内トップクラスの安比高原スキー場岩手県八幡平市)は、16年からアジア系資本が経営に乗り出した。インバウンドをターゲットに、北京や上海にも支店を設けたほか、利用期間拡大のため人工降雪機14基も導入した。昨シーズンの来客は34万人。ホテル利用の3割は海外客だ。
 今期は新型コロナウイルスの影響で中国からの入り込みは大幅減だが、豊富な雪が幸いして欧米系の来客は例年の倍という。運営会社岩手ホテル&リゾート広報部の阿部隼人マネジャーは「長期的に見れば北京冬季五輪でブームに沸く中国やアジアの来客は今後も伸びる。45万人の来客が目標」と話す。
 山形県蔵王温泉スキー場では、樹氷を巡るツアーなどでスキーヤー以外の観光客を増やしているほか、コース滑走を疑似体験できるバーチャル映像などを活用し海外市場の開拓をめざす。宮城蔵王のすみかわスノーパークでは樹氷や雪の回廊を巡るツアーが盛ん。「今後はインバウンドの拡大にもさらに力を入れていきたい」と石山幸太総支配人は話す。
 ピークの1800万人(1998年)の3分の1に落ち込んだとされる国内のスキー・スノーボード人口。近年は海外客が「ニセコ」や「ハクバ」に殺到、国際リゾートとして脚光を浴びている。観光庁も活性化に着目。復興庁の「東北観光アドバイザー会議」は、東北観光復興の柱としてスノーリゾート育成推進を提言する。(溝口太郎)