以下、朝日新聞デジタル版(2020/8/13 7:00)から。
アフリカ大陸の南東、インド洋に浮かぶ「楽園」の島国モーリシャスを襲った貨物船の重油流出事故。新型コロナウイルスの流行で痛手を負っていた観光業にとって、影響は計り知れない。
モーリシャスは、東京都とほぼ同じ面積に約130万人が暮らす。透き通った海は世界的にも有名で、「トム・ソーヤーの冒険」の著者、マーク・トウェインは、その美しさから「神はモーリシャスというパラダイスを創り、それをまねて天国を創った」と語ったとされる。
リゾート地としての開発が進む一方で、海岸の環境保全や、数千とも言われる多様な生物の保護も進められ、昨年は欧州や中国などから約140万人が訪問。630億モーリシャスルピー(約1690億円)の収入をもたらしたという。
座礁現場に近いポワントデスニー地区周辺では、リゾートホテルが立ち並び、普段なら海水浴を楽しむ観光客でにぎわっていた。数百メートル沖合には、亀や桃色のハト、爬虫(はちゅう)類などが生息する小島もある。周辺の海はダイビングやシュノーケリングに人気のスポットで、色とりどりの魚やサンゴ礁を見ることができた。
ただ、新型コロナウイルスの流行を受けて、3月19日から国際線の運航を停止し、今も入国を制限している。5カ月近く営業ができていない飲食店の男性は「コロナ禍のさなかにこの貨物船の事故だ。生態系への影響はもちろんだが、自分たちの収入も激減しており、生きていけるか不安だ」と長期的な影響を心配する。
(後略)
(ヨハネスブルク=石原孝)