以下、朝日新聞デジタル版(2020/5/28 22:00)から。
新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着き、緊急事態宣言が解除された。オーバーシュート(爆発的な患者の増加)も医療崩壊も起こらず、私たちは何とか第1波を乗り切った。だが油断をすれば、「第2波」はすぐ来るかもしれない。感染力が強いこのウイルスと、どう向き合うべきなのか。
日本や中国、韓国、欧州の多くの国では、散発的な感染者集団(クラスター)は出ているものの、ピーク時に比べると感染者は減りつつある。しかし世界保健機関(WHO)は25日、こうした国々で性急に感染拡大防止策を解除すれば、直ちに第2のピークが訪れると警鐘を鳴らした。
スペインかぜ第2波、致死率は10倍
約100年前に流行し、世界で約6億人が感染、数千万人が亡くなったスペインかぜのときはどうだったのか。スペインかぜを分析した東京都の資料によると、日本での第1波は1918年11月に訪れ、約4万4千人が死亡した。その後、収束に向かったものの、約1年後の冬に第2波が到来した。米国やフランスなどでは第2波の方が脅威となり、国立感染症研究所によると、致死率は第1波のときの10倍だったという。第2波の兆候を捉える方法の一つとして、海外で注目されているのが、感染者の排泄物(はいせつぶつ)に由来するウイルスの量を調べる下水道のモニタリングだ。
ウイルスの広がりを確認する方法には、PCR検査や抗体検査などもある。しかしPCRの検査数を大幅に増やすことは難しく、抗体検査はリアルタイムの感染状況はつかみづらい。
下水を採取し、ウイルスのサイズよりも小さい穴のあいた膜を使うなどしてウイルスを濃縮する。その後、PCRで1リットルあたりにどれだけウイルスの遺伝子があるかを調べて数値の変化を追えば、「急に値が大きくなった場合に素早く気付ける」と、北海道大の北島正章助教は言う。米国やフランス、オランダなどでは下水の中から感染者の排泄物に由来するとみられる新型コロナウイルスが検出されている。
覚知、収束にも役立つ可能性
北島さんは「外出自粛の呼びかけやPCR検査の態勢を強化するといった準備が前もってできる」と話す。この方法は、第2波の覚知だけでなく、収束に向かっているかどうかの判断にも役立つ可能性があるという。国内でも5月から、日本水環境学会のメンバーと自治体が連携し、東京都や横浜市などでモニタリングが始まった。北島さんは「仏ではロックダウン後に下水中のウイルス濃度が下がったという報告も出ており、こうした施策の有効性を見るのにも使える」と話す。
コロナ治療と先進医療、どう共存
第2波が来た場合にも対応できるよう、医療機関も、感染者が増えても医療崩壊が起きない体制づくりを進めている。東京医科歯科大付属病院の救命救急センターは第1波で、感染の疑いがない患者の受け入れを一時停止する「コロナシフト」をとった。重症と中等症の患者用に最大65床を整備し、最も多いときで36人のコロナ患者を受け入れた。
いまの状況は「なぜかうまくいっているだけ」。専門家はそう指摘し、第2波への備えが不可欠だと訴えます。医療機関は、そして私たちは、どう備えたらよいのでしょうか。記事の後半でお伝えします。
(後略)
(戸田政考、今直也、服部尚)