以下、朝日新聞デジタル版(2020年5月8日 7時30分)から。
米新聞大手ニューヨーク・タイムズ(NYT)は6日、今年1~3月に電子版の購読者数が46万8千件増と過去最大の伸びを記録したと発表した。新型コロナウイルスをめぐる報道が新たな読者を引きつけており、4月末時点では電子版の購読者数が400万件に達したという。
NYTは3月、新型コロナについての記事の多くを、有料契約者でなくても読めるようにした。3月の月間ページビューは25億と普段から倍増。「米国の成人の半分超がNYTにアクセスした」としており、その結果、新たな有料読者の獲得にもつながった。電子版の購読料を月15ドル(約1600円)から17ドルに値上げしたが、購読者は増え続けた。
2011年にNYTが電子版を有料化して以来、これまで購読者がもっとも伸びたのはトランプ政権が発足した17年1~3月の30万8千件増。政権に批判的な報道が新たな読者を呼び込んだ。今回は、それを5割超も上回る驚異的な伸びだ。
電子版、クロスワードアプリなどを合わせたデジタルの有料契約者の総数でも、1~3月は58万7千件増と過去最大の伸び。4月末時点では、紙の新聞も含めた契約者が600万の大台を突破した。NYTは25年までに1千万件に伸ばす目標を掲げる。
NYTがこの日発表した1~3月期決算は増収増益だった。売上高が前年同期比1%増の4億4363万ドル(約470億円)、純利益は同9%増の3285万ドル。新型ウイルスの感染拡大で米経済の動きが鈍っており、広告収入は同15%減ったが、購読料収入の伸びで補った。
コロナ禍により、米国では広告収入に頼るネットメディアや地方紙、テレビの苦境が深まっている。NYTも4~6月は広告収入が同50~55%も落ち込む見込み。ただ、マーク・トンプソン最高経営責任者(CEO)は6日の電話会見で「広告への依存を減らし、購読料を重視するビジネスモデルで我々は他のメディアよりも優位に立っており、コロナ後の世界でも成功する」と自信を見せた。(ワシントン=江渕崇)