「7億円では救えない学生たち 「コロナに未来奪われる」 新型コロナウイルス」

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 以下、朝日新聞デジタル版(2020年5月2日 15時00分)から。

 「バイトがなくなった。親がタクシーの仕事でほとんど仕事がない」
 「図書館が使えなくて本が読めない。パソコンがないので図書館で使えないと困る」
 学生団体「高等教育無償化プロジェクトFREE」代表で東京大学4年の岩崎詩都香(しずか)さん(21)と、「一律学費半額を求めるアクション」代表で大学院生の山岸鞠香(まりか)さん(26)が1日、日本記者クラブで記者会見を開き、新型コロナウイルスの感染拡大が学生生活に与えた影響について訴えた。会見はテレビ会議システム「Zoom」を使って行われた。

 「高等教育無償化プロジェクト」は、大学生や短大生らを対象に、コロナ禍の影響についてのアンケートを実施し、1200人から回答を得た。それによると、36%が「コロナ問題でアルバイトがなくなった」、48%が「親の収入が減った」と答えた。大学をやめることを「考える」という答えも20%にのぼり、岩崎さんは「コロナ禍による経済被害が学生を直撃している」と指摘する。
 オンライン授業についても30%が「経済的負担が増える」とし、41%が「落ち着いて受講できる環境がない」と答えた。
 岩崎さんは「もともとギリギリの生活を送っていた学生が多数存在して、柱がなくなった家みたいになっている」と話す。「このままでは新型コロナウイルスに学生生活と未来が奪われる世代が生まれる」


文科省予算2763億円、でも…

 感染拡大に対応する緊急経済対策を盛り込んだ総額25兆を超える今年度補正予算は、4月30日に成立した。文部科学省関係の予算も、小中学校でコンピューター1人1台を実現する「GIGAスクール構想」など2763億円が盛り込まれている。
 しかし、学生に対する授業料減免の予算は、国立大学分が4億円、私立大学分が3億円、国立高等専門学校分が200万円で、総額7億円にとどまる。文科省の担当者は取材に対して、「減免の基準は大学ごとに異なるため、減免を受ける人数は算出できない」と説明する。
 しかし、国立大学分の予算4億円は、授業料の全額を免除した場合、約700人分に相当。私立大学分の3億円は、各校の減免額の平均で割ると約1600人分にあたるといい、あわせても約2300人人分にとどまる。萩生田光一文部科学相も4月30日の参院予算委員会で「必ずしも十分と考えていない」と認めた。
 コロナ禍を受けて大学の学費減額を求める署名活動をしている山岸さんは「署名活動は『7億円では救えない』と始まった」と話す。カナダでは、苦境に陥った学生の支援に7千億円があてられる計画だといい、山岸さんは「(7千億円あれば)大学を辞めないといけないというハードルを下げることができる。政府にはスピーディーで大規模な予算措置をとってもらいたい」と訴えた。(山下剛