以下、朝日新聞デジタル版(2021/4/2 8:00)から。
東京オリンピック(五輪)・パラリンピックに向け国が開発しているアプリ(オリパラアプリ)のあり方が問われている。海外観客の健康管理のためのもので、民間企業への開発・運営委託費は約73億円に上る。コロナ禍で海外観客の受け入れ断念で、アプリの見直しや予算の圧縮を検討しているが、具体策は決まっていない。
開発・運営の民間委託をめぐり、入札の公示日が昨年12月28日で資料の提出期限が1月8日だったことについて、期間が短すぎるとの指摘もある。
平井卓也デジタル改革相は3月23日の会見で、「システム仕様、運用方針を見直して、不要となる部分の削減ができないか精査する作業に着手している。委託先との契約変更により、予算の圧縮を図ることを含め、確実な開発をやっていきたい」とした。
予算の圧縮規模について平井氏は予断を持って言えないとしつつ、「コールセンターや多言語対応などいくつか楽になる部分があるので、減るのではないかと想像している」という。
コロナ禍のなか海外観客らは隔離期間が必要となるため、来日してもすぐに観戦できない恐れがあった。内閣官房IT総合戦略室では、健康管理アプリを利用してもらうことで、隔離が不要になることをめざしていた。
開発・運営の委託費は約73億円だ。国内向けの感染者接触通知アプリ「COCOA(ココア)」の委託費約3億9千万円と比べ高額だ。国会でも野党側は高すぎると批判している。
朝日新聞が入手した契約書などによると、委託先を決める入札は1月14日にあった。NTTコミュニケーションズやNECなどの共同事業体だけが参加し、落札した。内訳は、アプリ自体の開発費18億円、関係機関とのデータ連携基盤整備費14億円、多言語対応機能などの開発15億円、サポートセンターの設置費用17億円などとなっている。
IT総合戦略室は「ココアはアプリの開発費が主であるのに対し、こちらは情報連携や多言語対応機能などの関連予算が含まれ、想定利用者数からみれば高くはない」としている。
NTTコミュニケーションズは委託費が高額だとの指摘があることなどについて取材に、「受注者側でありお答え出来る立場にない」としている。
事業仕様書では、アプリの利用者として海外観客80万人及び大会関係者40万人に加え、国内観戦者も300万人に上ると想定している。海外観客の受け入れ断念で利用者の大幅減は避けられない。利用者の想定がもともと適正だったのかどうかも、問われる。
(後略)
(座小田英史、酒井祥宏)