「首相「私はルイ16世と同じではない」」

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 以下、朝日新聞デジタル版(2020年5月22日 19時58分)から。

新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言中に賭けマージャンをし、辞任した黒川弘務・東京高検検事長をめぐる問題が22日の衆院厚労委員会で取り上げられた。この日、安倍晋三首相が答弁にたった唯一の国会審議だったためだ。黒川氏の定年延長につながった法解釈変更をめぐり、「朕(ちん)は国家なり」の言葉を残したルイ14世に例えられた首相は「それは違う」と反論した。主なやりとりは次の通り。
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 野党統一会派小川淳也氏(無所属) 「重大かつ複雑困難な事件の捜査公判に対応するために不可欠だ」という理屈を立てて、違法、違憲の疑いのある閣議決定を強行し、勤務(定年)延長した。その黒川氏が国民が苦しい思いをしている時に外出自粛要請を無視して密室で賭け事をするという信じられない不祥事で辞任する。前代未聞だ。今回の経緯に至った任命責任をどう取るか。
 安倍晋三首相 検事総長が適切に、適正に処分を行い、私は了承した。黒川氏については、法務大臣からの閣議請議により閣議決定するという適正なプロセスを経て、引き続き勤務させることとしたものであり、勤務(定年)延長自体に問題はなかった。人事案を最終的に内閣として認めた責任は私にある。批判は真摯(しんし)に受け止めたい。
 小川氏 進退伺を出した森雅子法相をなぜ慰留したのか。
 首相 森法相には、法務省検察庁で国民の信頼回復に全力で努めて欲しい。
 小川氏 緊急事態宣言の一部解除があったのに、なぜ昨日、会見をしなかったのか。
 首相 おそらく黒川氏の事案と絡めて質問されているんだろうと思うが、ずいぶん前から、昨日は関西の2府1県に限られていることもあり、ぶら下がりを行うという方針をすでに決めていた。
 小川氏 黒川氏に対する訓告処分は国家公務員法の懲戒処分ですらない。退職金6千万~7千万とも。国民感情に照らして適切だとは思えない。
 首相 検事総長が事案の内容など諸般の事情を考慮し処分を行った。
 小川氏 国家公務員一般職の定年延長については与野党間に大きな議論の隔たりはない。これもろとも廃案にするつもりか。
 首相 検察庁法の改正についても厳しいご批判をいただいている。同時に、コロナウイルス感染症の拡大によって社会状況が厳しい状況で、公務員の定年延長について議論を進めることの批判もある。それを含めて検討をする必要がある。
 小川氏 検察関連法案と一般職の国家公務員の定年福利厚生法案は切り分けることを要求する。
 首相 検察官も公務員であることから、公務員法全体の定年延長の改正案についてまとめている。
 立憲・西村智奈美氏 黒川氏に国会で事実関係を話してもらう必要がある。
 首相 この委員会で予定する法案の質問は6問もあり、相当時間をかけて答弁を用意した。それに関する質問が全くないのは残念だ。その点(=黒川氏の国会招致)は国会で決めることだ。
 西村氏 なぜ黒川さんの定年延長を決めたのか。
 首相 適正なプロセスを経て引き続き勤務させた。検事総長にするために勤務(定年)延長させたものでももちろんない。
 西村氏 1月の定年延長の閣議決定を取り消す考えはないか。
 首相 閣議決定自体を撤回する必要はない。
 共産・宮本徹氏 元検事総長らが出した意見書。検察官にも国家公務員法の適用をすると従来の解釈を変更したことについて、「フランスの絶対王制を確立し君臨したルイ14世の言葉として伝えられる『朕は国家である』との中世の亡霊のような言葉を彷彿(ほうふつ)とさせる姿勢だ」と批判。真摯(しんし)に耳を傾けるべきではないか。
 首相 あの、ルイ16世(正しくは14世)と同じとまで言われると、多くの方々はそれは違うのではないかと思うのではないか。私がここに立っているのも、民主的な選挙を経て選ばれた国会議員によって選出された。根本的なところをよく見ていただかなければならない。共産党はどのように党首を決められるか承知をしていないが、我が党で選挙によって総裁を選んでいる。