「新潟)「悪疫退散」の花火 片貝の業者自ら鼓舞」

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以下、朝日新聞デジタル版(2020/6/2 10:30)から。

 コロナ禍終息を祈る花火が1日、全国で上がった。各地の業者が参加を予定し、このうち新潟県内は7業者。「悪疫退散」の願いを込めた花火が夜空を彩った。

 全国の花火大会が次々と中止になるなか、「全国の人たちに希望と元気を届けたい」と若手花火師の有志が企画し、全国の同業者に呼びかけて実現した。記録に残る日本最古の東京・隅田川の花火大会が1733(享保18)年に始まったのは、前年の大飢饉(ききん)と伝染病の犠牲者の慰霊と悪疫退散を祈念からとされることから、新型コロナの一日でも早い収束の願いを込める。

 県内は「越後三大花火」のうち、柏崎市の「ぎおん柏崎まつり 海の大花火大会」(毎年7月26日)、長岡市の「長岡まつり大花火大会(長岡花火)」(同8月2~3日)に続き、小千谷市の「浅原神社秋季例大祭奉納大煙火(片貝まつり)」(同9月9、10日)も中止になった。

 四尺玉で知られる片貝煙火工業(小千谷市)は1日、片貝まつりの会場で3号玉と4号玉を計25発打ち上げた。片貝まつりは江戸時代中期に始まり、浅原神社の氏子が自ら作った花火を打ち上げていた。後に専門業者が担うようになったが、旧片貝町内の最後の業者が廃業する際に、本田さんの祖父が引き継いだのだという。「今年は創業40年なので、記念の40号(4尺)と意気込んでいたのですが」と専務の本田和憲さん(48)は話した。


 行政が主導することが多い県外では新年度予算の中で、花火大会の予算が決まるが、商工会など民間団体主催の花火大会が多い県内は、花火の注文が大会の2カ月前に決まることも少なくないという。そのため、「注文を待って作っていたら大会に間に合わない。前年の実績から、時期ごとに『尺玉が何発、その他が何発』と計算し、年間で製造計画を立てている。大会中止は大打撃だ」と本田さん。

 実は昨年から逆風が続く。昨年10月の消費増税に伴うスポンサー離れ、少雪でスキー場の花火もほとんどが中止になった。「そこにコロナでトリプルパンチ。そもそも東京五輪で花火大会が延期や中止になる『オリンピックパンチ』は予想していましたが、それより強烈。(五輪が)来年開催されたら第4のパンチです」

 経営は厳しく、先行きが全く見えない。本田さんは「今回の打ち上げは、見る人を元気にする目的もありますが、逆境に負けないぞと、自らを奮い立たせる花火でもあるんです」と話していた。(伊丹和弘)