「9月入学「直近導入は困難」 自民党案、検討継続を提言」

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以下、朝日新聞デジタル版(2020/6/1 20:29)から。

 「9月入学」を検討する自民党のワーキングチーム(WT)は1日、「今年度・来年度のような直近の導入は困難」などとする政府への提言書案をまとめた。前回案で今後の検討の場を「総理直轄の会議体」とした文言は、「総理の下の会議体」に修正。2日に安倍晋三首相と萩生田光一文部科学相に提出する。

 提言書案の題は「『学校休業に伴う学びの保障』と『秋季入学制度』について(案)」。 直近の導入を困難とした理由については、「幅広い制度改革についての国民的合意やその実施に、一定の期間を要することとなるため」とし、今後については「総理の下の会議体において、各省庁一体となって、専門家の意見や、広く国民各界各層の声を丁寧に聴きつつ、検討すべきである」と記述した。このうち「専門家の意見や」も新たに加筆した。

 WT座長の柴山昌彦文科相は「総理直轄」を「総理の下」とした理由を「総理が差配できるような誤解を招きかねない」と説明した。

 「学びの保障」については、学校設置者の判断で今年度を2週間~1カ月など延長▽大学などで1年生の始期のみ遅らせる▽大学入学共通テストを含め大学入試の日程を2週間~1カ月程度後ろ倒し、などの検討を求める。

ベテランと若手議員で意見食い違う
 柴山氏は29日のWTで意見をまとめようとしたが、導入賛成派の下村博文文科相らの意見もあり、「総理直轄の会議体」などの文案を提示。しかし、慎重派の若手議員らが文言の削除を求め、まとまらなかった。その一人、井林辰憲衆院議員は取材に「9月入学ありきで議論を進めているように思われると思った。それよりも学びの保障や入試の問題を優先してほしいと考えた」と述べた。今回の議論の混乱を国民にわびるべきだとも意見したという。

 9月入学は、新型コロナウイルスの影響による学びの遅れの回復などを理由に、一部の高校生や知事らが導入を訴え、官邸も一時前向きな動きを見せた。しかし、未就学児の学年分断や待機児童の増加、巨額の財政・家計負担などの懸念が明らかになると、専門家や与党からも慎重・反対論が続出した。(宮崎亮)

首相「拙速に行うことはない」
 政府が検討する「9月入学」について、安倍晋三首相は1日、導入見送りを求める提言をまとめた公明党議員と首相官邸で会談し、「新型コロナウイルス(対策)と9月入学は別に考えた方がいい。(9月入学は)選択肢の一つだが拙速に行うことはない」と述べ、早期導入に慎重な姿勢を示した。

 同党のプロジェクトチーム座長の浮島智子衆院議員らが首相と会談後、記者団に明らかにした。同党によると、首相は「9月入学が今回浮上したことで広く国民を巻き込み、色んな課題を検討できたことはよかった」と話し、長期的な導入検討には含みを残したという。

 提言では、9月入学は新たな教員確保や就職時期のズレによる労働力不足など「メリットを大きく上回るデメリットやコストが生じる」と指摘し、「拙速に検討を進めるべきではない」と結論づけた。(大久保貴裕)