「カジノ基本方針、政府が決定先送りを検討 IR汚職影響」

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以下、朝日新聞デジタル版(2020/1/20 21:25)から。

 政府はカジノを含む統合型リゾート(IR)の整備地域を選ぶ基準を示す基本方針について、当初予定していた今月中の決定を先送りする方向で検討に入った。IR事業をめぐる汚職事件で現職国会議員の逮捕に発展し、野党のほかカジノに反対する市民から厳しい批判を浴びていることから、事件の推移や国会での議論を見極める方針だ。

 政府・与党の関係者が明らかにした。政府は昨年7月の参院選への影響を避ける狙いで、昨夏に予定していた基本方針案の公表を選挙後の同9月に先送りした経緯がある。決定を先送りする期間が長くなれば、IR誘致を目指す自治体の準備や、政府が目指す「2020年代半ば」の開業時期に影響する可能性がある。

 基本方針は、自治体が国に申請する「区域整備計画」の認定時の評価基準を示すもので、IR実施法に基づいて国土交通相が策定する。方針案では、カジノ施設の「有害な影響の排除」や「国際競争力の高い滞在型観光の実現」などの審査項目を提示した。

 政府は、内閣府の外局として今月7日に発足したカジノ管理委員会の意見を踏まえて月内に基本方針を決定する方針を示し、汚職事件の発覚後も、予定通り進める考えを示していた。先送りすれば、方針を一転させることになる。西村明宏官房副長官20日の記者会見で「カジノ管理委を含めた関係行政機関との協議中の段階で、それ以上の話は控えたい」と述べた。


方針一転 責任問う野党
 官邸幹部は20日、「国会の様子を見てということになる」と先送りの検討を認めた。元内閣府副大臣で、自民党に所属していた秋元司衆院議員の逮捕後も、菅義偉官房長官は記者会見で予定通り進める考えを強調。官邸幹部も「早く決定しないと誘致をめざす自治体が具体的な作業に入れないので困る」と否定的だったが、方針を一転させた。

 官邸幹部は、基本方針の決定には、今月7日に発足したカジノ管理委員会との協議が必要な点を指摘。「委員が就いたばかりなのに、内容をよく理解しないまま基本計画を策定するのはどうかとの意見もある」と釈明した。

 IRの導入をめぐり、自民党は関連法の採決を強行。汚職事件では、カジノを推進してきた自民党日本維新の会所属の国会議員への「政界工作」疑惑も浮上した。報道各社の世論調査ではカジノへの反対論は根強く、支持母体・創価学会に根強い反対論が残る公明党幹部も「このままの日程で『はい、導入』とはいかない」と漏らしていた。政府は、早期成立をめざす2020年度当初予算案の国会審議などへの影響を見極める必要があると判断したとみられる。

 基本方針は、誘致をめざして自治体がつくるIR事業計画の評価基準となり、誘致レースの「号砲」に当たる。政府は「2020年代半ばのIR開業」に向けて1月中に基本方針を決め、自治体の計画づくりを促す青写真を描いていた。決定が大きく遅れれば、自治体側の作業にも響くことになる。

 一方、立憲、国民民主党共産党社民党など野党は20日、「カジノ廃止法案」を合同で衆院に提出した。立憲の安住淳国会対策委員長は、記者団に「日本にカジノはいらない。導入を断念させるため、この法成立に全力で取り組みたい」。共産党志位和夫委員長も記者会見で「(秋元容疑者を)IR担当副大臣に任命したのは首相だ。首相の責任を直接問う」と述べた。(相原亮、大久保貴裕、今野忍)