「人種差別と格差、コロナで浮き彫り 米でやまぬ抗議デモ」

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以下、朝日新聞デジタル版(2020/6/2 6:00)から。

 白人警官が黒人男性の首を圧迫して死なせた事件をきっかけとした米国での抗議活動は、5月31日も各地で続いた。放火や略奪も起き、騒然とした雰囲気が広がる。デモの背景には、繰り返される黒人への差別に加え、新型コロナウイルスによってあぶり出された格差の問題もある。

 「息ができない、プリーズ、プリーズ」。米中西部ミネソタ州ミネアポリスで警官に首を押さえられ、こう訴え続けたジョージ・フロイドさん(46)が亡くなってから6日後の5月31日、デモは全米各地で続いた。参加者を突き動かすのは、米国の根深い人種差別だ。

 首都ワシントンで行進した黒人のアトン・クローリーさん(24)は「(フロイドさんの事件は)組織的な虐殺だ。差別は米国社会に深く根を張り、なくならない」と憤る。デモに初めて参加したのは、自身の苦境もあったからだ。カフェで時給15ドル(約1600円)で働いていたが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、4月に解雇された。「黒人の多くは貧困から抜け出せない。その格差がコロナで浮き彫りになった」

 やはり黒人のテリー・ブラノンさん(45)は個人の邸宅のプールを清掃する会社に勤める。時給15ドルで半年契約という不安定な身分だ。「富める者はより豊かに、貧しい者はさらに貧しくなる」と声を荒らげた。

 ニューヨーク・タイムズによると、抗議活動は140都市以上に拡大した。ミネソタ以外の州でも、人種に関連した事件が起きていることも影響していそうだ。

 南部ジョージア州では2月、黒人男性(25)がジョギング中に射殺された。5月になってその時の様子の動画が表面化し、ようやく容疑者の白人親子が逮捕されたが、今度は地元警察の捜査が適切だったかが問われている。5月末にはニューヨークで、ひもをつけずに犬を公園で散歩させていた白人女性が黒人男性から注意され、「脅されている」と警察に虚偽通報する騒ぎも話題となった。

 デモの大半は平和的に続いているが、一部では激化し、40都市以上が夜間外出禁止令を出した。ワシントンのホワイトハウス近くでも31日夜、建物が放火され、警官隊が催涙弾で応じた。フィラデルフィアなどでは商店の略奪が起き、ニューヨークではパトカーに火炎瓶を投げつけた女性らが逮捕された。デモ隊の一部が意図的にあおっているとの見方も広がっている。(ワシントン=渡辺丘)

(後略)

(ワシントン=渡辺丘 デトロイト=藤原学思 ワシントン=園田耕司)