米公民権運動の指導者マーチン・ルーサー・キング牧師が「私には夢がある」と人種差別撤廃を訴えたワシントン大行進から57年となる28日、大規模な集会が首都ワシントンで開かれた。リンカーン記念堂前に各地から数千人が集まり、相次ぐ警官の暴力で亡くなった黒人の名前を連呼して人種差別の根絶を訴えた。
集会は「首からひざをどけて」と題された。今年5月、ミネソタ州で黒人のジョージ・フロイドさん(46)が後ろ手に手錠をかけられ、身動きできない状態で白人警官にひざで首を圧迫されて窒息死させられたのがきっかけ。公民権団体などが開催を呼びかけた。
5日前にウィスコンシン州で警官に背後から7回銃撃された黒人のジェイコブ・ブレークさん(29)の父親は、米国には白人と黒人で別々の司法制度があると批判し、拳を突き上げて「黒人やヒスパニックの若者が苦しむ映像を見るのはうんざりだ」と声を張り上げた。キング牧師の孫ヨランダ・リネー・キングさん(12)も登壇し、「私たちの世代が構造的な差別を永久に終わらせる」と訴えた。
一方、女子テニスの大坂なおみ選手は28日、棄権の意向を撤回して臨んだ「ウエスタン・アンド・サザン・オープン」の準決勝で勝利した。「BLACK LIVES MATTER(黒人の命も大切だ)」と書かれた黒のTシャツ姿でコートに入り、試合後の会見では「やらなければいけないと思うことをやっているだけ」と話した。
また、会見では「この試合は勝たねばならない」との重圧から前夜は腹痛に苦しんだことも明かした。ウィスコンシン州の黒人銃撃事件を受けてツイッターで同大会の棄権を表明後、想像を超える反響があって「少し怖くなった」といい、携帯電話の電源を切ったという。(ワシントン=香取啓介)