「東京もNYに? コロナは「油断につけこむウイルス」」

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 以下、朝日新聞デジタル版(2020年7月17日 10時30分)から。

 

 新型コロナウイルスへの感染者数が計40万人近くにのぼり、約2万5千人が亡くなった米ニューヨーク。世界有数の大都市として、東京との共通点も多い。東京の感染者数は約8300人、死者は326人(7月15日現在)と、ニューヨークに比べれば大幅に少ないが、16日には過去最多の286人を記録するなど、感染が拡大している。果たして東京が「第2のニューヨーク」となる可能性はあるのか。第一線の医師としてニューヨークで治療に当たってきたコロンビア大学助教授(循環器内科)の島田悠一さんに聞いた。


共通する「密」な環境
 ――ニューヨークも東京も世界的な大都市で人が多く、「密」な環境にあるという共通点があります。
 ニューヨークの面積は、東京23区に川崎市を足したぐらいです。人口は約800万人ですが、近郊に住んでいたり通勤したりする人たち、いわゆるニューヨーク都市圏の人々を含めると約1900万人になります。東京都の人口が約1400万人、都市圏の人口が約3500万人ですので、米国では最も東京に近い都市といえると思います。
 ニューヨークと東京には多くの共通点がありますが、異なる点もあります。医療、文化、対策の面においてどう違うのか、島田さんが読み解きます。
 通勤や通学のため、バスや地下鉄などの公共交通機関を利用するニューヨーク市民の割合は5割を超えます。ニューヨークにおける平日の地下鉄・バスの平均利用者数は761万人、年間輸送人員は22億人に上ります。米国の他の大都市と比べると群を抜いて高い数字です。


 平均通勤時間も、米国の他の大都市より長くなっています。これは、車社会である米国の他の大都市に比べて公共交通機関を利用する人が多いという要素に加えて、郊外に住み市内中心部に通勤する人が多いことを反映していると考えられます。


 ――多くの人が集まる店や施設も多くあります。
 数多くのレストランやバー、劇場、美術館、博物館、ナイトクラブ、映画館、コンサート会場、スポーツジムがあります。観光客も含め、それぞれの場所に毎日多くの人が集まるため、いわゆる「3密」の状態が生じやすいという点も東京に似ています。
日本と異なる文化
 ――反対に東京とニューヨークが違う点はなんでしょう。
 呼吸器感染症の拡大という観点からみると、マスクへの意識の違いが大きいでしょう。新型コロナ以前は医療従事者でもマスクをあまりつけていませんでした。もしつけていると、かえって職場で同僚から体調を心配されるような文化でした。さらに大きな視点から言えば、マスクを含めた感染対策をどれだけ順守してきたかという差があるかもしれません。
 米国民には建国以来、個人主義が強く根付いており、政府や科学者など他人から行動を押し付けられたり制限されたりすることを嫌う人が一定数存在します。


 (後略)

 

(服部尚)