「藤沢市、8年使用の育鵬社版を選ばず 中学の歴史と公民」

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 以下、朝日新聞デジタル版(2020年7月31日 18時46分)から。

神奈川県藤沢市で31日、市立中学校で来年度から4年間使う中学校教科書の採択があり、歴史、公民とも保守色の強い記述で賛否が分かれる育鵬社版を選ばず、東京書籍版を使うことが決まった。市では2012年度から育鵬社版を使ってきた。
 現場の教員が各社の教科書を読み比べた調査書が事前に公表されていたが、育鵬社版の評価は低かった。調査書は四つの観点について優れている教科書に○(マル)をつける形式で、○の合計数は歴史では東京書籍版が60、帝国書院版が55。育鵬社版は2と最下位だった。公民では東京書籍版69、帝国書院版40で育鵬社は下から2番目の2。同じ「新しい歴史教科書をつくる会」系の自由社版はゼロで最下位だった。
 31日にあった教育長と4人の教育委員の協議では、歴史は3人が東京書籍版、2人が帝国書院版を支持。帝国書院版を推した1人は東京書籍版にも高評価を与えた。公民は3人が東京書籍版のみ、1人が東京書籍版と帝国書院版、1人が帝国書院版を推した。
 文部科学省によると、育鵬社版の20年度の全国での採択率は歴史6・4%、公民5・8%。横浜市大阪市の市立中で使われている。
 育鵬社は「新しい歴史教科書をつくる会」の流れをくみ、扶桑社の子会社として07年に設立された。市民団体などから、歴史教科書については「過去の戦争を正当化し、負の側面を直視していない」、公民は「標準的な憲法の理解から外れた記述が多く、国民の権利より義務を強調している」との批判がある。
 藤沢市は2011年に初めて歴史と公民で育鵬社版を採択。当時の市長による教育委員の人選が結果に大きく影響した。その後の採択でも育鵬社版を選び、現在、全19の市立中で約1万人の生徒が使っている。(吉野慶祐)