「緊急事態宣言下の中学入試始まる「今さらやめられない」」

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以下、朝日新聞デジタル版(2021/1/9 11:28)から。

 緊急事態宣言下の首都圏で、中学入試シーズンが10日から本格的にスタートする。会場の分散、入り口での検温、隣席との間に仕切りを設けるなど、各校とも新型コロナウイルスの感染防止策に追われている。受験生が感染した場合に備え、追試を設ける学校も増えている。

 入り口で手指を消毒し、一人ずつ検温。アクリルパネルで仕切られた机で問題を解く。緊急事態宣言初日の8日朝、東京国際フォーラム(東京都千代田区)で行われた、西大和学園中学(奈良県河合町)の東京会場での入試の一コマだ。200人を超す小学6年生がマスク姿で臨んだ。

 東海、岡山会場でもこの日に入試を行い、3会場を合わせた今年の志願者は昨年より75人多い486人だった。東京会場の受験者も昨年より1割ほど増えた。

 東京、神奈川では2月1日から私立中の一般入試がスタートする。その前に、1月に始まる関西や埼玉、千葉などの入試を受ける受験生も多い。西大和学園の入試は得点も開示され、一部では、難関の開成中(東京都荒川区)入試の「前哨戦」とも言われる。横浜市から来た小6男子は「コロナに注意しなきゃという緊張感と、頑張るぞという気持ちが半々くらい」。母親は「感染リスクを考えた末、1月の受験校はここだけにした」と打ち明けた。

 岡田清弘学園長は「緊急事態宣言開始当日の入試。それでも受験生が安心して力を発揮出来るよう最大限努力します」と話した。

 10日には、1都3県で最も早い埼玉県の私立中一般入試が始まる。例年、初日だけでも6千人以上が受験する栄東中(さいたま市)は今回、密を回避するため会場を本校と関連2校の3会場に分散。入試日も10日と12日の選択制にした。

 感染予防のため車での来校も認め、校庭を駐車場として開放した。机にはアクリル板を3方向に設置し、受験生にはペン型の除菌スプレーを無料で配る。井上和明・入試広報センター長は「受験生を感染させるわけにはいかない。できるだけのことはしたい」。

 例年、幕張メッセで入試を行う市川中(千葉県市川市)は今回、例年の約1・5倍の広さの会場を確保した。広尾学園中(東京都港区)も、受験生が最も多い2月1日の午後入試は、六本木に外部会場を設ける。

 感染防止のため、面接や集団討論をなくす動きもある。緊急事態宣言の発出が迫った5日、横浜雙葉中(横浜市)は9日から順次予定していた入試面接の中止を発表。雙葉中(東京都千代田区)も7日に面接中止を決めた。共立女子中(同)は受験生同士が話しあうような入試の形態を変更し、学力検査も理科・社会の時間と配点を減らす。

 新型コロナの感染者や濃厚接触者のための追試を設ける動きもある。2月23日に追試を新設した開成中の野水勉校長は「2回の試験の公平性を保つのは難しいが、何よりも受験機会の確保を優先した」と説明する。灘中(神戸市)、桐朋女子中(東京都調布市)、大妻多摩中(同多摩市)など、各地の学校に広がっている。

 森上教育研究所によると、首都圏1都3県の中学受験者数は、リーマン・ショックの2008年度以降に8年連続で減少したが、その後、上昇に転じた。昨年2月1日午前の首都圏の中学入試の受験者数は、過去10年で最も多い約4万1300人。1月で入試を終えた受験生や、公立中高一貫校の受験生も加えれば、1都3県の小6の約2割にあたる。コロナ下の今回も増加が見込まれるという。

 森上展安代表は「塾に入る年齢が低くなり、今の小6は何年も前から準備してきている。今さらやめられない」と指摘。公立中と比べて私立中のオンライン教育が充実していることも、私立中受験者の増加に影響していると分析する。ただ、移動や会場での感染リスクから受験校を絞り込む傾向も見られ、1人当たりの受験校数は減るとみる。

 一方で、コロナ禍による家計への影響が広がる可能性もある。二松学舎大付柏中(千葉県柏市)、栄東中など、奨学生や特待生枠を新設・増設する動きも出てきている。

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 福岡県でも4日から私立中学入試が順次、始まっている。福岡市の中村学園女子中は9日に後期入試をする。感染防止のため入り口で検温と消毒、休み時間の換気を徹底。折からの寒波もあり、例年は認めない教室内でのコート着用を今年は認めるという。(宮坂麻子、柏木友紀、渡辺純子

各地の私立中学一般入試の開始日
1月4日 福岡県

  10日 埼玉県

  16日 近畿2府4県

  20日 千葉県

2月1日 東京都、神奈川県