以下、朝日新聞デジタル版(2021/8/23 5:00)から。
元横浜市立大教授の山中竹春氏(48)は、「コロナとカジノ」を重点的に訴える戦術で、過去最多の8人が乱立した混戦の横浜市長選を制し、初当選した。
市長選は元々、市が進めるカジノを含む統合型リゾート(IR)誘致の是非を争点に、与野党双方が支援する候補者が争う構図になるとみられていた。反対運動を進める市民団体から「統一候補」を求める声が高まり、立憲民主党が擁立したのが山中氏だ。
反対運動にかかわりのない山中氏への抵抗もあったが、市民団体は最終的に支援を決めた。「ハマのドン」と呼ばれる横浜港ハーバーリゾート協会の藤木幸夫会長(91)の支持も取り付けた。曲折はあったが、「カジノを阻止する真の候補」とIR反対の他候補との違いを打ち出せた。
元国家公安委員長の小此木八郎氏(56)がIR誘致のとりやめを掲げて立候補したため、IRは争点としては薄れた。知名度がある候補者が次々に立ち、無党派層の支持が分散した。これに対し、山中氏は新型コロナウイルスの「中和抗体」に関する市大チームの研究を主導した実績をもとに「唯一のコロナ専門家」と訴え、差別化を図ったことも功を奏した。
ただ、選挙戦を勝ち抜いたが、行政手腕は未知数だ。中学生以下の子ども医療費など「三つのゼロ」を目標に掲げたが、財源の裏付けはない。市議会は自民、公明両党が過半数を占める。厳しい市政運営が避けられないなか、真価が問われる。(武井宏之)