船をあとにして、ソロトランピングを開始する

 ボートで砂浜に着けてもらって、いよいよエイブルタズマン国立公園の二日目のアクティビティであるトランピングの開始である。
 ルートは、最低限の掲示がしてあるので道に迷うことはなさそうだ。緑の板に黄色いペンキで書かれている掲示板の塗り直しをしている係員がいた。
 今は引き潮ではないので、引き潮(Low Tide)の際のルートを歩くことはできない。わき道になるけれど、引き潮のときに歩けるルートはどんな様子になっているのか、一応見に行ってみる。行ってみると、すでに潮が満ちていてルートがない。エイブルタズマンのトランピングは、引き潮、上げ潮の時間が大事だと言っていたが、なるほど、上げ潮のときにはルートが潮でつぶれて全く歩けないのである。
 歩いている途中、小雨がぱらぱら降ってきた。今日は18キロ歩く予定だが、こちらニュージーランドは雨が降ったりやんだりすることも多い。それでも雨はあまり気にならない。雨に対しては、私は、傘ではなくアウトドア用の上着の雨具を持ってきている。雨よりも、温度調節の方が重要だ。歩いていると暑くなってくるので、薄めのセーターを脱いだり着たりして対応する。
 アンカレッジからバーク湾、そしてトンガ、オネタフティ(Onetahuti)へ向かう。なんか忘れたような気分がしていたが、船で飲んだビール代金を払うのを忘れていたことを思い出した。最後まで請求されなかったからのんびりしたものだ。先方も今頃ノートに書きつけた私の直筆を見て、請求し忘れたことを思い出していることだろう。まぁ、今更戻るわけにもいかない。後でなんとかするしかない。
 観光案内所でもらった地図にはルートがきちんと書き込まれているし、所要時間も記載されているのだが、とにかく3時15分にシーバスに乗るという時間が決められている。時間に間に合わないと、とんでもないことになるということは想像に難くない。初めてのコースだから時間通りに着けるかどうか、多少の不安もある。とにかく早目のペースを心がけることにしよう。
 水が貴重品であるが、数は少ないが水道栓のあるキャンプサイトもあるので、足りなくなったらそこで補充することにしよう。昼食としては、サンドイッチもある。結構お腹も空くので、朝つくったサンドイッチを分割して食べる。モーテルの前で買ってバックパックに詰めておいたフルーツナッツ(Fruit & Nut Delight)がうまい。ハイキング用に甘いものを買っておいて正解だった。
 トンガ湾に着く途中で石切り場の説明がある。ここの石を建造物に使ったらしい。ここから持ち出した石で作ったものがウエリントンにかなりあるという。
 大きなバックパックをしょった若い女性が二人いた。お先にどうぞとすすめたが、「私たちは大きな荷物をしょっているので、どうせ抜かれてしまう。そちらこそお先にどうぞ」と言われてしまった。そりゃ、そうだと納得し、こちらの女性の頑健さと自分の思慮の無さを感じさせられた。