シーバスには充分間に合う時間帯にトンガ湾に着いた。かなり雨が降ってきたので、寒くなってきたが、時間つぶしに海岸を歩く。いま私が住んでいる街には海岸がある。けれども、夏などは海の家などが林立してお世辞にもきれいな海とは言えない。今歩いているような国立公園でなくてもニュージーランドの海岸のよいところは、何も置いてない点にある。前に訪れたオークランド北に位置するオレワの海などがそうだった。いまこの海岸を歩いていて、私の街の海岸も昔はこんな風だったんだろうなとSF映画的に想像すると、本当にそういう気持ちになってきて、日本人がおこなってしまった取り返しのつかない自然破壊に対する慙愧の思いが募ってくる。
雨の中をずっと歩いていくわけにもいかないので、シーバスを待つために戻る。じっと待っていると、いよいよ寒い。見ると、昨日シーカヤックで同行したリンたち三名がいる。近寄っていって「シーカヤックはどうだった」と聞くと、「昨日は最高だったけど、今日は最低」と、唇を震わせながらリンが答えた。カヤックの片づけを手伝ってあげる。