肌寒い中で、シーバスを待つ

 全体の地図くらいは掲示してあるけれど、どの海岸にも、シーバスの発着所の案内板の類は一切ないので、シーバスがどこに発着するのかよくわからない。海岸につけている一隻のシーバスに私の予約券を見せると、どうやらこのシーバスではないらしい。親切にも無線で連絡を取ってくれて、私が待っているシーバスはもう少しで着くからここで待っているといいと言ってくれた。
 シーバスに乗り込むには、どうやら裸足の方がよさそうだ。靴を脱いで待っていると、よけいに寒くなってくる。ようやく私のシーバスが見えてきた。海岸にいる私に向かって白いハシゴが伸びてくる。そのハシゴ伝いに、靴を持ちながらシーバスに乗り込む。格好は極めてみじめだが、精神的には私は満足していた。さきほどリンと話したときも、シーカヤックは最低だったけど、「そっちはどうだったの」と聞かれて、「雨の中だったけど、トランピングは楽しかったよ」と私が言ったら、まさかと彼女は信用していない風だった。