「日本の教育そのものへの根本的な危機感がある」

 総長選挙で、接戦を制して当選したばかりの白井克彦総長のインタビューが載っていた。
 早稲田の白井総長について私は全く存じ上げてはいない*1
 白井総長はインタビューの中で、「伝統的に早稲田ではトップダウンで決めるというやり方はしていない」と言われている。私学危機を乗り越えるという口実で、いま私学ではトップタウンを強めるガバナンスが大流行であり、大学全体としてトップダウンが強まっている。そうした情勢の中、早稲田は例外のようだ。
 「大学4年間で知識やスキルを身につけ、根性というか思想というか、自分の考え方を持てるようになってもらいたい」と述べる総長の要望は、今風のごく普通の要望なのかもしれない。けれどもこの表現は私には気になる。「根性というか思想というか」というくだりは、コトバの使い方として、「思想」というものがまるでご存じないという印象を強く受けるからだ。
 まぁそれはよしとして、ようするにこの発言は、今日の日本の教育では、早稲田大学に入ってくるような「高学力」と言われている学生層であっても「自分の考え方」を持てないレベルにあると、嘆かわしい日本の現実を裏付けることになっている。白井総長みずから吐露されているように、「日本の教育そのものへの根本的な危機感がある」ということなのだろう。
 白井総長は続けて、「学部教育においては日本のみならず、世界中の大学のなかでも最高でありたいのです」と希望を述べているけれど、そもそも考えることが十分にできていない日本の学生に求める課題として、これは少し無理がありはしないか。
 大学に入る以前に小中高で考える力を育てないと、日本の教育はよくならない。
 少子化と言われている時代に、小中高の教育をていねいにやっていく必要があると痛感しているが、相変わらず、やるべきことをやらず、やってはいけないことをやっているのが、日本の悲しい現実ではないのか。

*1:7月1日の朝日新聞では、「白井氏は理工学術院教授。02年11月、奥島孝康前総長の改革路線の継承を訴え総長に就任した」「学内には、白井氏の路線に対して「批判や意見に耳を傾けない」との不満を持つ教職員もいたという」とある。