以下、朝日新聞デジタル版(2021/4/1 20:15)から。
作家の村上春樹さん(72)が1日、母校の早稲田大学の入学式に出席し、文学部・文化構想学部の新入生たちに祝辞を述べた。
1975年に早稲田大文学部を卒業した村上さんは、7年間の在学中に東京・国分寺でジャズ喫茶「ピーターキャット」を開いた。角帽にガウン姿で登壇した村上さんは「在学中に結婚しちゃって、仕事を始めて、最後に卒業した。あまりそういう生き方をおすすめはしませんが、なんとかなるもんです」とユーモアをまじえて新入生たちにエールを送った。
村上さんは「心という未知の領域をどうやって探りあてればいいのか、その役割を果たしてくれるものの一つが物語。小説という働きを抜きにしては、社会は健やかに前に進んでいけない。社会にも心というものはあるから」とも述べ、「小説家という職業は人の手から手へとまるでたいまつのように受け継がれてきた。みなさんの中にそのたいまつを受け継いでくれる人がいたら、とてもうれしい」とスピーチを締めくくった。
直筆原稿や執筆資料、2万点近くに上るというレコードのコレクションなどを収めた「村上春樹ライブラリー」(正式名称は早稲田大学国際文学館)が4月にオープンする予定だったが、新型コロナウイルスの影響で10月に延期された。今月1日付で大学の特命教授に就任した日本文学研究者のロバートキャンベルさんがライブラリーの顧問を務めることが、この日発表された。村上さんは祝辞の後、田中愛治総長から大学の芸術功労者として表彰された。(興野優平)