松本清張原作で、野村芳太郎監督による映画「影の車」を観た。
もとより大胆なラブシーンが登場する芸風は私の好みに合わないが、この映画も、そうした一本であるから、どうしても辛くなる。
大人と子どもの視点に着目している点は、ねらいとしてよいのだが、より重要な論点としては、6歳の子どもが実際に殺意を抱いたのか、それとも加藤剛が演じる少年時代にトラウマをもつ旅行代理店勤務の男の妄想なのか、そこが焦点になるのだが、その辺の表現に散漫な印象が残った点が残念だ。
母親であり、大人の女性でもある、夫に先立たれた女を、岩下志摩が演じているのだが、最終結末の、息子と愛人という二人の男性の間に入ってしまった葛藤の演じ方にも不満が残った。
唯一よく理解できるのが、小川真由美が演じる主婦の鈍感さだが、これは、世の男性なら、大いに共感するところかもしれない。
けれども、男性からすれば、むしろけなげな女性を描写して欲しい願望があったりするのが私の好みの正直なところだ。
野村芳太郎監督は、ロケ中心の映画の方がいいと思うのは私の偏見か*1。