大連港へ

 大連港を訪れる。
 歴史のある大連には、「大連市重点保護建築」というプレートのついた建物が少なくない。いま訪れている大連港にもそうした歴史的な建物がある。
 わたしは戦後の生まれで、完璧に平和憲法の下で育ったから、子どもの頃より戦争の面影はほとんど感じなかったけれど*1、私の母方の祖父は陸軍大佐であったし、父母の世代は、17、8歳で、敗戦を迎えた。
 当時の日本人は、この大連港から中国に入植し、この大連港から引き引きあげたのだ。

 引揚者といえば、子どものときに好きでよく読んだ漫画家のちばてつやさんや、映画監督の山田洋次さん、指揮者の小澤征爾さん、歌手の加藤登紀子さん、岩波ホール高野悦子さん、脚本家のジェームズ三木さん、私の好きな落語家の古今亭志ん生も引揚者*2である。
 だから今回の旅は、私の世代の上の世代の体験から学ぶ旅でもある。いや学ばなければならない旅なのだ。

*1:戦争の面影で思い出すのは、白衣を着て帽子を被り、アコーデオンを鳴らしながら、カンパを募る、戦争で怪我をした兵士の姿くらいだろうか。

*2:引揚者といえば、旧「満州」だけではなく、樺太、台湾、朝鮮半島南洋諸島などからの引揚者を指す。