「男はつらいよ」第8作、「寅次郎恋歌」を観た

男はつらいよ第8作

 マドンナは、貴子役の池内淳子
 本作では、さくら(倍賞千恵子)が、「母さんの唄」を歌う場面が秀逸。
 また母親の葬式の場面で、母を思う博(前田吟)が好演している。
 それに、博の父親役・諏訪飈一郎で志村喬の存在感。
 葬儀後の家族の対話の場面は、小津安二郎の「東京物語」を踏まえた家族の話のような気がする。さくら(賠償千恵子)が紀子(原節子)を思い出させてならない。
 志村喬の寅次郎に諭す場面がなんといっても秀逸。
 また、子供を思う後家さんの役を池内淳子が見事に演じていた。
 博、おいちゃん(森川信)、諏訪飈一郎の組み合わせだと、コミュニケーション不全に陥るのも可笑しい。
 おいちゃんは、やっぱり、森川信がいいなぁ。
 本作は、2時間ものになり、日常の暮らしの中に幸せがあるというテーマを表現する全体の演出が素晴らしい。
 饅頭泥棒をして子供と遊ぶ寅次郎。ヨハンシュトラウスの「春の声」が始まると、楽しい遊びと解放感が始まる。地域の教育力についても、ちょっぴり考えさせてくれる。
 最後の寅次郎と貴子との場面は、「無法松の一生」が、少しだけ透けて見える。
 なんともすてきな場面だ。
 さらに、さくらと寅次郎の場面。意識が流れるような展開はすばらしい。
 1971年12月公開。