「益川さん「勉強より studyを」 母校で語る」

 f:id:amamu:20051228113104j:plain

 朝日新聞デジタル版(2009年2月8日18時17分)より。

 「知ることの楽しみ方を覚えて」。ノーベル物理学賞を受賞した京都産業大教授の益川敏英さん(69)と、高エネルギー加速器研究機構特別栄誉教授の小林誠さん(64)が6日、それぞれの母校である名古屋市内の高校で講演し、後輩を励ました。また、愛知県から学術顕彰、名古屋市から学術表彰を受けた。

 益川敏英さんは午後1時過ぎ、名古屋市立向陽高校(名古屋市昭和区)の体育館に、満場の拍手のなか登場した。

 「学問は、より多くの自由を獲得するための作業だ」。エジソンヘーゲル福沢諭吉パスツールとファーブル。歴史に残る多くの学者を引き合いに出しながら、益川さんはまず「私たちはなぜ学ぶのか」を語った。

 「いまは非常に変化の激しい時代。私たちはその変化の法則を読み取り、10年、20年先を読み取る力が必要です。学校で教えられていることにその芽があるはず。勉強という言葉には苦しみを強いる意味があって私は大嫌い。でも英語studyの語源には知る楽しみという意味がある。本来、知ることは楽しいこと。ぜひ楽しみ方を覚えてください」と熱弁を振るった。

 1年生の男子生徒が「研究者になるのを迷いませんでしたか? 僕はいろいろ興味があって迷っています」と尋ねると、「私も数学か物理か迷ったし、大脳生理学の勉強会も開いた。重要なのは何をやるかではなく、その瞬間に大事と思うことに全力で取り組めるかということ」と励ました。

 最後に「学者になるのも一つの道だが、人生にはいろんなことがある。努力を惜しみなく傾注できる道を発見してください。そしてこの道は違うと思ったら、躊躇(ちゅうちょ)する必要はない。120%の努力を傾注してもなお楽しいなら、新しい道を進めばいい」と後輩へエールを送った。

 生徒を代表して2年生の臼井志帆さん(17)が花束を渡すと、しっかりと握手。「高校時代は男子クラスだったので、女子高校生と握手するのは初めて。感激しております」と会場を沸かせた。(冨岡史穂)