「絶望の時代 抵抗のために書く」

amamu2015-02-12

 朝日新聞の夕刊で連載中の「人生の贈りもの」。
 今回は、作家・作詞家のなかにし礼さん。
 以下、朝日新聞から。

 ――戦後70年を前に、昨年12月に開いた新宿のライブでは憲法への思いも語りました。

 今まで日本に戦争が起きなかった最大の理由はね、憲法第9条ですよ。戦後の民主主義がたとえ米国から与えられたものにせよ、どこかの国が必ずやこういう憲法をつくって世界の平和に貢献しなければならない。人間の進化の歴史からいえば、当然現れるであろう理想の憲法なわけですね。これを堅持している限りは、いろんな理屈をこねて官僚が何を言おうと、政治家は身を張ってね、日本を戦争に巻き込まないというアクションはできるはずなんですよ。

 ――昨年、「天皇日本国憲法」という本を出しました。

 自民党憲法改正と言っているけど、国会議員が率先して守らなければならない憲法をね、彼らが声高に改正というのはおこがましい。国民の象徴である天皇陛下が、よろこびをもって御名御璽(ぎょじ)を記されたということの重さをね、どう考えているのかと。現在でも天皇陛下平和憲法の価値を機会あるごとに語られている。天皇陛下を無視する天皇制だったらね、天皇制そのものも存在しえない。

 僕は戦争経験者だから、国家はどんな残酷なことも、どんな非道なこともするんだということを知っているから。絶望の中でなお何かをする論理がね、いま組み立てられないんですよ。

 ――先は真っ暗だと。

 僕は絶望しているんですよ。こんな時代がね、生きてる間に来るとは本当に思わなかった。もしこの記事を締めくくるとすれば、「絶望の中にあってどういう抵抗の方法があるのか、目下思案中である」かな。

 ――その方法はありますか。

 一時でも長く戦争のない時間を延ばすことが最低限の知性であり、抵抗であろうと思うんですよ。正直にものを書くしかない。自分の書斎で書きためていく。それが死後発見されるかもしれないけど、それでもいい。