「家族・地域 日本の民主主義の根っこ」

 朝日新聞の夕刊で連載中の「人生の贈りもの」。
 今回は、歴史家・色川大吉さん。
 以下、朝日新聞から。
 

 ――丸山さんのような近代主義では、歴史はとらえきれないということですか。

 かつては私も近代主義者だったのです。戦後の民主化、近代化はいいことだ、というところから出発していますから。しかし、それは西洋で確立した原理であって、普遍的とは言えないことに気がついた。
 社会的合意をつくるシステムは地域や文化ごとに歴史的に形作られてそれぞれ違うものだから、近代主義だけで一気に押し通すことはできません。欧米には、自分たちが「善良」であるという傲慢さがある。言論の自由は至上の価値があると押しつけるのは、今のイスラム問題にも現れていますね。

 ――しかし、だとすると日本のような非西洋の世界で民主主義は可能なのですか。

 日本には明治維新以来、日本流の民主主義があるんですよ。対等な個人が水平で議論を交わせるカルチャーを持った国ではないんです。そんなことをしたら、どこもぎくしゃくしてしまう。家族や地域という共同体の協議と合意によって作られる民主主義でなければ、根っこがないので定着しません。