「人種差別行為後、ド軍本拠地初登場のグリエルと対戦したベテラン左腕のとった行動が全米で話題に」

 以下、ベースボールチャンネル(2017/11/01)より。

 ロサンゼルス・ドジャースは、31日(日本時間11月1日)に本拠地で行われたワールドシリーズ第6戦でヒューストン・アストロズを3-1で下し、世界一へ逆王手をかけた。

 この試合にはベテラン左腕のリッチ・ヒル投手(37)が先発登板。グラウンド外では紳士ながら、グラウンド内では非常に感情的で熱い男になると評された男が、人種差別行為後に初めてドジャー・スタジアムに登場したユリエスキ・グリエル内野手の打席でとった行動が米国中で話題となっている。

 ワールドシリーズ第3戦で「つり目ジェスチャー」と呼ばれるアジア人を揶揄するジェスチャーを行い、スペイン語で蔑称を発したグリエルは全米中からバッシングの対象となっていた。

 しかし、一方のダルビッシュはこの一件をこれ以上留めず、今回を教訓に前へ進んでほしいという意思を表明していた。しかし、自軍の選手を中傷されたドジャースファンの怒りは収まらず、ドジャー・スタジアムでは試合開始前の選手紹介からグリエルに対しブーイングの嵐が沸き起こった。

 そして、2回表に5番・一塁で先発出場していたグリエルが打席に立つと、ドジャースファンの怒りは頂点に達し、スタジアムはブーイングの嵐に。そして、先発のヒルは投球間隔を非常に長くし、ブーイングの時間を長く取るという行動をとった。

 米国「ヤフースポーツ」では、31日付の特集で「投手は試合のペースをコントロールすることができる。マウンドで観客から暖かい拍手を浴びるための時間を長めにとるのと同様に、相手にブーイングを聞かせるための時間を与えるようにすることもできる」と評しており、今回の投球間隔の長さは意図的なものであったとしている。

 また、ロサンゼルス・タイムズのドジャース番記者であるアンディ・マクラウ氏は、自身のツイッターヒルが今回の差別行為にかなりの不快感を覚えていたと証言。そして、ヒル自身も今回の行為を「グリエルの行為に無言で抗議するためのジェスチャーだった」と話している。

 そして、31日付の地元紙「ロサンゼルス・タイムズ」の特集内でのコメントでは「今回の行為は彼を痛めつけたりするというわけではなく、二度とこのようなことが起こらないようにするための最善の選択だった」と話している。

 投球間隔を長くすることで、自らの調子を狂わせるリスクもあったが、2年前には独立リーグにも所属した苦労人は、世界中で注目を集めており、メッセージの発信力が高いワールドシリーズの場で差別行為への抗議を優先した。37歳という年齢で初のワールドシリーズ出場ながら、リスクを負いながらも差別と戦った行為には米国内で称賛の声が多く上がっている。

 ヒルは5回途中1失点という内容で降板となったが、中継ぎ陣の力投、打線の援護に恵まれてチームは勝利。29年ぶりの世界一に望みをつなげた。