自動車の心臓部にあたるエンジンの部品の不具合で、スバルが計約41万台のリコール(回収・無償修理)を届け出た。影響は国内だけでなく、主力市場の米国など海外にも及ぶ。リコール作業の長期化は必至だ。品質にかかわる不正が相次ぐ中での大規模リコールは経営を大きく揺るがしかねない。
不具合があったのは、バルブスプリング=キーワード=と呼ばれるエンジンの重要部品だ。リコール対象の車に搭載されているスバル独自の水平対向エンジンは、バルブスプリングの配置上の問題から、その交換には車からエンジンを丸ごと取り外し、一部を解体して交換しなければならない。
スバルは1日、1台あたりの改修作業に「2日程度かかる」との見通しを明らかにした。対象の車は国内だけで10万台強。改修作業を終えるにはかなりの時間がかかりそうだ。スバルは改修に要する期間について「できるだけ迅速に作業を進めるが、スケジュール感をもってやるものではない」と述べるにとどめた。
スバルでは近年、リコールの届け出件数が増加傾向にあり、生産台数の増加に品質管理が追いついていないとの見方が出ている。リコールの増加で整備現場の負担も増しているが、今回のリコールに伴い、作業を担う整備士や場所の確保も必要になる。整備現場に一段と負担がかかりそうだ。
国土交通省によると、海外分のリコール対象車は約31万台。内訳は主力の北米市場が約16万台、欧州などその他地域が約10万台、同じエンジンを積むトヨタ自動車の「86(ハチロク)」の海外向けが約5万台。海外でのリコール対応も長期化は必至だ。スバルは10月、品質関連費用の計上を理由に2018年9月中間期の営業利益の予想を490億円下方修正した。5日の中間決算発表時にリコール費用の詳細を公表するが、作業が長期化して費用が想定よりふくらむ恐れもある。
■「検証に時間」と説明 リコール届け出まで5年以上
不具合の情報が、販売店からスバルに最初に寄せられたのは12年4月。13年6月以降に生産した車には、強度を上げたバルブスプリングを順次搭載した。それ以前に生産した車についても、部品交換が必要になる可能性があると認識しながら、リコールを届け出るまでに5年以上を要した。
改良部品を搭載した後も、改良前のバルブスプリングの不具合の報告は続いた。なぜ、リコールまでに5年以上の時間がかかったのか。スバルは、バルブスプリングの破損以外にも、不具合の原因があるかどうかの検証に時間がかかったためだと説明した。
自動車評論家の両角岳彦氏は「バルブスプリングの調査は、サプライヤーや素材メーカーなどとも検討を重ねないといけないので大変な労力と時間がかかる」としながらも、「それを考慮しても、リコールまで5年以上かかっているのは遅いと言わざるをえない」と指摘する。国交省幹部も「事情もわかるが、少し届け出が遅いのでは」と話す。
◆キーワード
<バルブスプリング> 自動車のエンジン部品として使われるコイル状のバネ。ガソリンなどの燃料を燃やす際に、燃料と空気を混ぜたガスを燃焼室に吸入したり排出したりするバルブ(弁)を閉じる役割を果たす。今回のリコール対象の車種では、1台につき16個使われている。
■国内のリコール対象の車
(型式▽車台番号▽製造期間▽台数)
<インプレッサ>
DBA―GJ6▽002086~004928
▽2012年1月17日~13年6月6日▽2031台
DBA-GJ7▽002566~012555
▽12年1月18日~13年6月4日▽7177台
DBA―GP6▽002344~009978
▽12年1月17日~13年6月6日▽5295台
DBA-GP7▽003718~045077
▽12年1月17日~13年6月6日▽3万3062台
<フォレスター>
DBA―SHJ▽021283~026050
▽12年1月17日~12年6月13日▽4739台
DBA―SJ5▽002001~025663
▽12年10月10日~13年9月30日▽1万4242台
<BRZ>
DBA―ZC6▽002002~010144
▽12年3月9日~13年7月2日▽7803台
<86(ハチロク)>
DBA―ZN6▽002028~031766
▽12年3月12日~13年7月2日▽2万6804台