「毎月勤労統計」の不正調査問題で、厚生労働省は2018年1~11月の物価変動の影響を除いた「実質賃金」の前年同月比の伸び率について、実態に近い数値でみた場合に9カ月分でマイナスになる可能性があるとの見解を示した。大半がマイナスだったことになり、野党は賃金が上がったように見せる「アベノミクス偽装だ」と批判を強めている。

 厚労省は04年に調査対象の一部で不適切な抽出調査を開始。さらに18年1月以降は不適切なデータ比較を始め、同月以降の賃金の伸び率が実際より高く算出されていた。問題の発覚をうけて今月23日、本来の調査結果に近づけるデータ補正をした12年以降の再集計値を公表した。

 その結果、18年1~11月の「現金給与総額」の実質賃金の前年同月比でプラスだったのは、3、5~7、11の5カ月で変わらなかったが、伸び率は10カ月で下がった。5月は0・7ポイント下がって0・6%増となり、最大の伸び率は6月の2・0%で、0・5ポイント下がった。

 ただ、18年1月には調査対象の見直しがあり、総務省は実際の賃金の動向をつかむには17年も18年も続けて調査対象となった事業所に限った調査結果を重視すべきだとしている。野党がこうした事業所に限って試算をしたところ、増減率はさらに8カ月で下がった。プラスは6月(0・6%)の1カ月のみとなり、前年と同じだった11月を除くと9カ月でマイナスになると出た。5月は1・1ポイント減のマイナス0・5%となった。野党は18年1~11月の平均は、厚労省の再集計値ではマイナス0・05%だが、試算ではマイナス0・53%に大幅に悪化するとしている。

 厚労省は17、18年で共通の調査事業所に限った実質賃金の伸び率は公表していないが、野党がこの試算を30日の合同ヒアリングで示したところ、厚労省の担当者が「同じような数字は出ると思う」と認めた。野党は厚労省に、共通事業所に限った実質賃金を算出して公表するよう求めている。