「根本氏「監督力」に批判 遅い初動・収拾見えず 統計不正」

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 以下、朝日新聞デジタル版(2019年2月1日05時00分)から。

 統計不正問題の広がりを受け、端緒となった「毎月勤労統計」を所管する根本匠厚生労働相の「監督力」に批判が集まっている。根本氏は安倍晋三首相の盟友でもあり、野党は政権の「アキレス腱(けん)」とみて、国会攻勢を強めている。▼1面参照

 まず注目されたのは、根本氏が問題を知った後の初動対応だった。根本氏は昨年12月20日に厚労省の事務方から不正調査の報告を受けたが、翌日の勤労統計の確報値の発表を止めず、新年度予算案の閣議決定にも署名した。この結果、政府は問題発覚後に予算案修正と閣議決定のやり直しをすることとなった。

 首相が秘書官から問題について報告を受けたのは28日。予算案組み替えが必要になるような事態を根本氏が知ってから8日間、首相に連絡がなされていなかったことになる。立憲民主党枝野幸男代表は30日の衆院代表質問で「隠蔽(いんぺい)に加担したと言われても仕方ない」と批判した。

 根本氏は「事案の影響が明らかになっておらず、予算案との関係性を判断できる状況になかった」と答弁し、当時の対応について釈明。だが野党側は納得せず、国民民主党榛葉賀津也参院幹事長は31日の参院代表質問で「確信犯だ」と批判した。

厚労省が設置した外部有識者による特別監察委員会による検証結果にも「第三者性」に疑念が出ている。監察委は設置6日後の1月22日、「組織的隠蔽は認められない」と結論づけた。根本氏は同日、この結果をもとに関係者の処分を発表したが、その後も問題が続々と発覚。榛葉氏は「全容が解明していないタイミングで、なぜあわてて幕引きを図ろうとしたのか」と批判した。

 さらに24日の衆院厚労委員会の閉会中審査では、監察委の聞き取りの半数近くを「身内」の同省職員が行っていたことが判明。野党から「お手盛りだ」と批判を受け再調査に追い込まれた。この際の根本氏の答弁にも誤りがあり、その後訂正を余儀なくされた。

 野党側は「事態の深刻さを理解しない」(枝野氏)と根本氏の資質を疑い、首相に罷免(ひめん)を要求。攻勢を強める野党は31日、統計不正問題をテーマにした衆院予算委員会の集中審議を開くよう求め、与党も合意した。

 事態の収拾が見えない中、自民党内からも苦言が出始めた。伊吹文明衆院議長は31日の会合で「大臣は細かなことまでは分からないが、分かった時にどう対応するかが一番大切。繕っちゃダメだ」と語った。

 だが首相は根本氏罷免を拒否。30日の衆院代表質問では根本氏について「事実を把握した後、必要な指示を行いつつ全力で対応にあたってきた」と評価した。根本氏は若手時代、首相、石原伸晃元幹事長、塩崎恭久厚労相と政策グループ「NAIS」をつくった仲。旧建設省(現国土交通省)出身で霞が関からは「手堅い」との評判もあり、不祥事が多発する厚労省のかじ取り役に起用された経緯がある。

 根本氏について、厚労省職員は「一生懸命支えていくしかない」と言葉少なだった。

 (磯部佳孝)