以下、朝日新聞デジタル版(2019年6月13日22時18分)から。
老後の生活費が2千万円不足するとした金融庁の報告書をめぐり、野党の追及の矛先が、年金制度を所管する厚生労働省にも向かっている。2千万円と計算する際の元データは厚労省が提出していたからだ。年金批判の高まりを回避したい厚労省は、報告書は金融庁が独自に作ったものと距離を置くのに躍起で、制度の持続可能性を強調している。
報告書を作った金融庁の審議会の議事録によると、厚労省の担当課長は4月の会合で、退職して主に年金で暮らす高齢夫婦の家計について「実収入と実支出との差は月5・5万円程度」と資料を示して説明。私的年金などを活用した資産形成の重要性にも言及していた。
13日の参院厚労委員会では、この厚労省の説明が焦点となった。社民党の福島瑞穂氏は「公的年金だけでは暮らしていけない、あとは自己責任でやれということか」と批判。厚労省の局長は、課長はあくまでオブザーバーとしての参加であり、「5・5万円」は総務省の家計調査から引用したデータだったと強調した。
さらに局長は、月5・5万円の赤字が30年続く想定で、生活費が2千万円不足するとした報告書のとりまとめへの関与も否定。「金融庁と共同事務局をやっているわけではなく、報告書について協議を受けていない。向こう(金融庁)の責任で作成された」とした。根本匠厚労相も「課長は5・5万円不足するとか2千万円不足すると説明はしていない」と述べた。厚労委に先立つ野党各党派の合同ヒアリングで、厚労省側は「年齢が上がると支出が減るので、厚労省は『5・5万円×12カ月×30年で2千万円不足』という単純な議論はしない」と主張した。
(後略)
(山本恭介 編集委員・浜田陽太郎)