自民党麻生派(56人)が正念場を迎えている。領袖(りょうしゅう)の麻生太郎財務相の地元の福岡県知事選で大敗を許し、所属議員が「忖度(そんたく)」発言で副大臣の辞任に追い込まれるなど逆風続きのためだ。同派の議席だった衆院大阪12区の補欠選挙は、浮沈を占う試金石となる。

 

 12日の参院本会議。桜田義孝・前五輪相の更迭を追及する野党の矛先は、麻生氏にも向いた。

 「(財務省が)公文書改ざんという重大な罪を犯したにもかかわらず、麻生大臣は居座り続けている。総理は大臣として適任とお考えなのか」

 立憲民主党牧山弘恵参院議員の質問に、安倍晋三首相は「麻生財務大臣は組織の立て直しに取り組まれているところであり、引き続きしっかりと職責を果たしていただきたいと考えている」と答弁した。

 首相は桜田氏を、自民党議員が「復興以上に大事」と発言した問題で更迭。ところが、公文書改ざんに加え、財務事務次官セクハラ問題、度重なる失言・放言などで野党の追及を受けてきた麻生氏を続投させてきた。第2次安倍政権発足以来の屋台骨を失えば、首相自身が厳しい状況に陥りかねないためだ。

 だが、自民党内では麻生氏への不満が募る。党組織の分裂に至った7日投開票の福岡県知事選で、麻生氏が擁立にこだわった新顔候補が大敗。その2日前には、麻生派塚田一郎・国土交通副大臣が、首相と麻生氏の意向を忖度して道路予算をつけたという発言の責任を取って副大臣職を辞める事態となった。

 統一地方選で地方に張りつく党中堅の衆院議員からは「麻生派が党の足を引っ張っている」との声があがる。首相に近い衆院議員の一人は「福岡知事選での麻生さんの負けは、今後に影響が残る。総理も心配している」と話す。

 

 ■大阪の衆院補選、試金石に

 一方、麻生氏の反転の機会となり得るのが、21日投開票の衆院大阪12区補選だ。麻生派北川知克・元環境副大臣の死去に伴う選挙には、北川氏のおいが立候補しており、派としての力量が試されるからだ。

 同派の甘利明選挙対策委員長は11日の派閥例会で「大阪12区は我々の同志、北川知克先生が志半ばで倒れ、それを引き継いだ選挙。これを落とすことはできない」と檄(げき)を飛ばした。ただ派内からは「負けた場合のダメージは大きい」との懸念も漏れる。(二階堂勇)