「世界で一番恥ずかしかった進次郎氏、でも日本の風潮は…」

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以下、朝日新聞デジタル版(2019年10月4日18時9分)から。

 国連の気候行動サミットに出席した小泉進次郎環境相から飛び出した「気候変動問題に取り組むことはセクシー」という発言。国内外で環境問題に取り組む若い世代の環境アクティビストは、彼の行動をどう見たのでしょうか。サミットに合わせ、ニューヨークを訪問中の清水イアンさん(27)に聞きました。

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 ニューヨークでは、若者たちの大規模なデモや多くの国際会議が行われました。僕も世界中から集まった環境の活動家、ジャーナリストと意見交換をしたいと思い、ニューヨークに来たのです。


 気候は、生活の基本条件です。だからそれが変動すれば、生活のすべてが不安定化してしまう。さらに温暖化による海面上昇で水没危機に直面する国々にとっては、気候変動対策は「生存」をかけた闘いでもあります。だから、具体策が求められる国連の場では、各国のリーダーは温室効果ガス排出削減の数値目標や明確な政策を表明していました。

 そんななか、石炭火力発電の利用を減らさず責任が重いと見なされている日本の環境大臣から出たのが、「セクシー発言」でした。

 僕は英語が母語の一つなので、彼が「人が振り向くような魅力のある」という意味でセクシーを使ったのはよく分かる。でも直後に気候変動への具体策を何も答えられなかったのは、彼の中に知識と意識がないことの表れではないでしょうか。ニューヨークではこの期間、朝食会イベントはベジタリアン料理が当然でしたが、彼はさっそくステーキ。牛肉生産は大量の温室効果ガスを出すのだから、せめて滞在中は避けてほしかったですね。現時点で「中身がない」という評価はその通りだと思います。

 だけどこうした言動をとらえて彼を袋だたきにするような日本のメディアや風潮には、ちょっと違うなと感じます。たたくだけたたいて引きずり下ろすのは、建設的じゃない。実際に、世界に比べて日本人の環境意識はとても低いと思います。自分たちが日々使う電力を賄うために、日本では温室効果ガスを大量に出す火力発電の新設の計画があることを、一般の日本の人はどれだけ知っているでしょうか。だから、環境活動は「セクシーでクール、ファン」でなくてもいい、とは僕は思いません。魅力的な活動によってできるだけ多くの人が関心を持つようにすることは、すごく大事なのです。

 小泉大臣には、大臣に就いただけで多くの人を環境に振り向かせた動員力があると思います。その点でも、これまでの大臣よりも期待できそう。彼が上っ面の言葉で止まらず、科学的視点に基づいた再生可能エネルギーの拡大などの具体策を多くの人を巻き込んで進めてほしいと思います。

 今回、世界で一番恥ずかしかったのは小泉大臣でしょう。でも国連で怒りの演説をしたグレタ・トゥンベリさん(16)からも刺激を受け、多くの学びがあったはず。それを生かしてほしいと思います。僕も喜んで協力します。

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 自分にできる気候変動対策を考えるよりも、「セクシー発言たたき」が目立った日本。私たちの低い環境意識の反映かもしれません。言葉だけでなく行動を――。小泉環境相への戒めは、自分たちにも向けられていると感じました。(藤田さつき)