「前校長「お世話になっているやろ」暴力被害、相談できず」

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以下、朝日新聞デジタル版(2019/10/22 15:00)から。

男性教員(25)への行為
 神戸市立東須磨小学校で横行していた教員間の暴力・暴言問題は、市教委の調査委員会が発足し、弁護士が実態解明に乗り出した。市教委などによると、一連の加害行為は、被害者の男性教員(25)が2017年春、新人として同小に着任してまもなく始まったとみられる。学校側が有効な手立てを打たず、行為がエスカレートしていった状況が浮かび上がっている。

 加害教諭4人のうち、30代の男性2人は15年春から同小に在籍。うち1人(A)は18年度、校内でのセクハラまがいの発言のほか、先輩教諭へのなれなれしい口調や呼び捨てが問題化した。学校は個別の指導や職員全員への研修をしたが、問題行為はその後も続いた。

 この教諭は、被害教員に対し、プロレス技をかける▽ロール紙の芯で殴る▽車の上に土足で上がる▽同僚女性にLINEで性的なメッセージを送らせる――などの嫌がらせ行為を繰り返した。もう1人の教諭(B)は、この教諭の行為をはやし立て、自らも暴言を浴びせたり、書類を投げて渡したりしていたという。

 被害教員と同じ17年春に着任した40代女性教諭(D)は「クズ」「犬」などの暴言をはき、懇親会の席で飲酒を強要するなどした。

 翌18年春に着任した30代男性教諭(C)も加わり、暴力や暴言を繰り返した。複数の加害教諭が、被害教員に激辛カレーを無理やり食べさせたのはこの年9月の出来事だった。

 関係者によると、年末になり、被害教員が意を決して当時の校長(今春に異動)に被害を相談しようとしたが、この前校長は「(加害教諭に)お世話になっているやろ」と話をさえぎり、取り合わなかった。

 市教委の調査では、被害教員が前校長から話を聞いてもらえたのは、翌19年2月、別の教員が前校長に「被害教員へのふざけがひどい」と訴えた後だった。ただ、前校長は被害教員がこのとき「大丈夫です」と説明したとして、具体的な内容は聞き取らず、加害側を口頭での注意にとどめた。

 当時、東須磨小の教頭として前校長のもとで働き、今春に校長に昇任した仁王(におう)美貴・現校長にもこうした経緯は知らされず、引き継ぎもなかったという。

 今年7月、被害教員は自らの被害を仁王現校長らに訴えたが、現校長も加害側への口頭注意で済ませ、市教委にトラブルの詳しい内容は報告しなかった。同校の校長は直近3年間に2回交代し、責任者が短期間で代わったことが被害の把握や情報共有に隙を生じさせたとの指摘もある。

 加害側の4人は、いずれも児童への指導や若手教員の育成などを中心的に担う中核の教員同士だった。世代や校内での立場が似通い、関係も強かったとみられる。現校長は問題発覚後の記者会見で、「全員が中核でつながりも強く、互いに『そんなことをしたらだめ』と言いにくい状況だったのかなと思う」と振り返っている。

 一連の問題では、25歳の教員以外にも、20代の教員3人(女性2人、男性1人)が被害を受けた。極めて悪質なセクハラ行為をされた▽キムチとアイスを同時に食べるよう強要された▽侮蔑的なあだ名で呼ばれた――などの内容で、調査委員会の弁護士らが経緯を詳しく調べている。(川嶋かえ)

問題の経緯(神戸市教委などへの取材による)
【2015年度】

4月 男性教諭A、Bが着任

【16年度】

4月 前校長が教頭として着任

【17年度】

4月 女性教諭Dと被害教員(25)が着任。まもなく加害行為が始まる

夏ごろ 教頭だった前校長が被害教員に飲み会への参加を強要

【18年度】

4月 男性教諭Cが着任。前校長が教頭から昇任し、現校長が教頭として着任

1学期末 教諭Aのセクハラまがい発言について、他の教諭が前校長に申し出。全職員にセクハラ研修を実施

2学期ごろ 教諭Aの先輩教諭へのなれなれしい口調や呼び捨てについて指導

9月 被害教員が無理やり激辛カレーを食べさせられる

年末 被害教員が前校長に相談しようとしたが取り合ってもらえず

2月 教員の1人が「職員室での被害教員へのふざけの度が過ぎている」と前校長に訴え。前校長は加害教諭4人を口頭で指導

【19年度】

4月 前校長が転出。現校長が教頭から昇任

6月 現校長が加害教諭4人の名を挙げ、「若手教員への度がすぎるからかいがある」と市教委に伝える

7月 被害教員への暴力行為を、教頭が教員らとの面談で把握。現校長が4人を指導したが、市教委に具体的な内容は伝えず

9月 被害教員が自宅療養。家族と市の相談窓口を訪ね、市教委が加害行為を把握

10月 加害教諭4人を学校業務から外し、保護者会で説明