「自粛要請はないけれど… 催しの参加や中止、どう判断? 新型肺炎・コロナウイルス 」

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 以下、朝日新聞デジタル版(2020年2月21日 7時00分)から。 

 

新型コロナウイルスの感染拡大でイベントの中止が相次ぐ中、国が「政府として一律の自粛要請を行うものではありません」との声明を出した。今後、感染の広がりなどによって見直すというが、人が集まるイベントの開催や参加について、どうするか迷うケースも増えそうだ。参加者として人混みに出る場合や、主催者として催しを開催したり中止したりする場合、どんなことに気をつければよいのか。危機管理や感染症の専門家に聞いた。
イベントの代替方法や補償も検討を
 日本危機管理防災学会の市川宏雄会長は「新型ウイルスがどういうものか、わからない手探り状態だが、大流行する可能性も考えないといけない」と指摘した上で、「人混みを避けるためのイベントの中止や縮小は仕方がない」と話す。
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 主催者側による中止の場合には参加者への補償を考慮する一方、開催する場合は来場者に感染する可能性があることを伝えた方がよいという。「講演会などはインターネット配信にするなど代わりの方法を考えることもできる」と提案する。
 イベントに参加する場合は、マスクをつけて手をこまめに消毒するなどの防御策を取る必要があるという。「政府は規制ではなくお願いしかしていない。個人の責任が大きいと考えて行動するしかない」
イベント中止は強制ではない
 感染症の専門家はどうみるか。大阪大の朝野(ともの)和典教授(感染制御学)はイベントの開催や参加について「現時点では強制されることではないので、それぞれの判断でよい」と話す。
 イベントの制限については、国民の生命・健康に著しく重大な被害を与えるおそれがある新型インフルエンザのような感染症をふまえ、2013年に施行された特別措置法に規定がある。首相が緊急事態を宣言し、都道府県知事が催し物の制限を要請・指示する仕組みだが、新型コロナウイルスの致死率は低く、現在は特措法の対象になっていない。
 朝野さんも、外出する場合は手についたウイルスからの感染を防ぐためこまめに手洗いをし、鼻や口を触らないなどの対策を勧める。特に、高齢者は新型ウイルス以外の感染症でも、肺炎で重症化するおそれがあるため、注意を呼びかける。
屋内イベントと屋外イベントの違いは?
 また、新型コロナウイルスは患者のせきやくしゃみのしぶきに含まれるウイルスや、患者が口や鼻を押さえた手でドアノブや手すりにふれることで、そこに付着したウイルスから感染が広がると考えられている。
 こうした点から、室内で開かれ、患者と密集した空間で長時間一緒にいる可能性があるイベントに比べれば、屋外でのイベントについては「感染リスクが低く、柔軟に考えてよい」と話す専門家もいる。
 ただ、関西福祉大学勝田吉彰教授(渡航医学)は、3月1日に予定されている東京マラソンが4万人近い一般参加を中止して開催を縮小する方針について「適切だと思う」と評価する。大勢の人間が1カ所に集まることは「マスギャザリング」と呼ばれ、屋外であっても、これをきっかけに感染症が流行することがあり、不特定多数の人が集まる大規模な集会の中止などは「感染症対策の定石だ」という。
ウイルス広げぬ注意を
 今回の新型ウイルスについては「感染しても軽症の場合、ふつうに行動できることが厄介だ」と指摘する。東京マラソンを主催する財団は、沿道での観戦の自粛を呼びかけているが、勝田さんによると、沿道の観客の中に感染者がいた場合、大声で声援を送ることで、ウイルスを含んだ飛沫(ひまつ)が飛びちるおそれがあるという。
 勝田さんは、東京オリンピックが開幕する7月にも、新型コロナウイルスの感染が収束に至らない可能性を考える必要があるとみている。「健康な人もウイルスを媒介する可能性はある。人混みや高齢者の多い場所に行くのはできるだけ避けてほしい」と呼びかける。(鈴木智之)