「「船内隔離は失敗」 感染した英国夫妻の息子、涙の訴え」

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以下、朝日新聞デジタル版(2020/2/21 10:03)から。

 新型コロナウイルスの集団感染が起きた大型クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号の船内の様子を、乗客の英国人夫妻がフェイスブックなどに投稿し、同国で注目を集めている。夫妻は、情報が錯綜(さくそう)する中で状況がわからないまま下船するまでの状況を細かく報告。夫妻の息子は「日本での隔離が失敗だったのは明らかだ」「ちゃんと面倒を見てほしい」と涙ながらに訴えている。

 英メディアによると、乗船していた英国人は74人。乗客のデビッド・アベルさんは、19日に妻サリーさんと共に感染が確認されるまで、情報が錯綜して混乱した様子をフェイスブックに投稿していた。

 デビッドさんは18日、「私たちは(検査で)陽性になった。もうすぐ病院に行く」と短く報告。その後、「だまされたみたいだ! 病院ではなくて、ホテルに連れていかれるらしい」と書き込んだ。

 翌19日になって、「昨日はコミュニケーションの大きなエラーがあった。日本の隔離当局者は英語を話さない。ホテルに連れていくから準備しろというので、(感染を調べる検査で私たちは)陽性だったのかと聞くと、彼はうなずいた」と投稿。「ホテル滞在は4、5日だろうという。感染者への対応ではありえないのではないか」と困惑した経緯を記した。

 夫妻は18日、下船の準備を整えて待っていたが、迎えは来なかったという。なぜ下船後に病院ではなくホテルに向かうのか、そもそも自分たちは本当に感染しているのか。何もわからずに混乱したまま丸一日が過ぎたという。

 その後、英語を話す医師から感染を確認した。デビッドさんは20日フェイスブックに病院に到着したと報告。様々な検査の結果、コロナウイルスに感染はしているが、肺炎は発症していないと聞かされたといい、「やっと何が起きているかわかった」などと書き込んだ。

 夫妻の息子スティーブさんは19日、BBCの番組で「誰かが迎えに来てくれると思って待っていたのに誰も来ず、情報もない。救急車が来ると言われたり、いやバスだと言われたり、かき回されている」と、両親が置かれた状況を説明。「年老いた年金生活者なのに、あんまりな目に遭っている。きちんと面倒を見てほしい。そばにいられず、とてもいらだたしい」と涙を流した。

 スティーブさんによると、デビッドさんは糖尿病や若年性認知症を患っており、感染者として隔離されるとしても、食べ物が合う英国に戻ってからにしてほしいと訴えていた。

 英国政府はクルーズ船上の英国人のために帰国便を手配し、飛行機は21日に日本を発つ。ただ、搭乗できるのは感染と症状がない人に限られており、かつ帰国後14日間は国が用意した施設に隔離される。感染者は日本に残って治療を受けることになっている。(ジュネーブ=下司佳代子)