「「人類の脅威に対して連帯を」 広島市長が平和宣言」

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以下、朝日新聞デジタル版(2020/8/6 8:51)から。

 6日の広島平和記念式典で、松井一実広島市長が「平和宣言」を読み上げた。全文は以下の通り。

 1945年8月6日、広島は一発の原子爆弾により破壊し尽くされ、「75年間は草木も生えぬ」と言われました。しかし広島は今、復興を遂げて、世界中から多くの人々が訪れる平和を象徴する都市になっています。

 今、私たちは、新型コロナウイルスという人類に対する新たな脅威に立ち向かい、踠(もが)いていますが、この脅威は、悲惨な過去の経験を反面教師にすることで乗り越えられるのではないでしょうか。

 およそ100年前に流行したスペイン風邪は、第一次世界大戦中で敵対する国家間での「連帯」が叶(かな)わなかったため、数千万人の犠牲者を出し、世界中を恐怖に陥(おとしい)れました。その後、国家主義の台頭もあって、第二次世界大戦へと突入し、原爆投下へと繫(つな)がりました。

 こうした過去の苦い経験を決して繰り返してはなりません。そのために、私たち市民社会は、自国第一主義に拠(よ)ることなく、「連帯」して脅威に立ち向かわなければなりません。

 原爆投下の翌日、「橋の上にはズラリと負傷した人や既に息の絶えている多くの被災者が横たわっていた。大半が火傷(やけど)で、皮膚が垂れ下がっていた。『水をくれ、水をくれ』と多くの人が水を求めていた」という惨状を体験し、「自分のこと、あるいは自国のことばかり考えるから争いになるのです」という当時13歳であった男性の訴え。

 昨年11月、被爆地を訪れ、「思い出し、ともに歩み、守る。この三つは倫理的命令です」と発信されたローマ教皇の力強いメッセージ。そして、国連難民高等弁務官として、難民対策に情熱を注がれた緒方貞子氏の「大切なのは苦しむ人々の命を救うこと。自分のだけの平和はありえない。世界はつながっているのだから」という実体験からの言葉。これらの言葉は、人類の脅威に対しては、悲惨な過去を繰り返さないように「連帯」して立ち向かうべきであることを示唆しています。

 今の広島があるのは、私たちの先人が互いを思いやり、「連帯」して苦難に立ち向かった成果です。実際、平和記念資料館を訪れた海外の方々から「自分たちのこととして悲劇について学んだ」、「人類の未来のための教訓だ」という声も寄せられる中、これからの広島は、世界中の人々が核兵器廃絶と世界恒久平和の実現に向けて「連帯」することを市民社会の総意にしていく責務があると考えます。