「夫の墓前に報告 日本ジャーナリスト会議賞受賞」

 

 以下、大阪日日新聞(2020年9月9日)より。

 

 森友学園との国有地取引に関する公文書の改ざんを巡り命を絶った、財務省近畿財務局の職員、赤木俊夫さんの妻の赤木雅子さん(49)が8日、岡山県内にある俊夫さんの墓を訪れ、俊夫さんの手記(遺書)公開を理由に、日本ジャーナリスト会議賞(JCJ賞)の受賞が決まったことを報告した。

日本ジャーナリスト会議賞(JCJ賞)は毎年、優れたジャーナリズム活動に贈られる。今年は大賞と合わせ5点の受賞が決まった。その一つとして、赤木俊夫さんが死の直前に書き残した、森友事件の公文書改ざんの実態に迫る手記(遺書)の公開に踏み切った妻の赤木雅子さんが、報道に当たった本紙の相澤冬樹記者とともに受賞することになった。

 受賞の知らせから一夜明けた同日、赤木雅子さんは神戸市内の自宅から岡山県内にある夫、俊夫さんの墓を訪れた。墓石をきれいに整えた後、墓前に受賞を知らせる本紙1面の記事を掲げ、「トッちゃん(俊夫さんのこと)、こんな賞を頂くことになったよ。これもトッちゃんが命がけで手記(遺書)を残してくれたからだよ。トッちゃんのためにも改ざんの真相を必ず明らかにするからね」と受賞を報告した。

 赤木雅子さんの元には、受賞を知った知り合いや関係者から早くも続々とお祝いのメッセージが届いている。取材したテレビ関係者からは、このようなLINEが届いた。「これで赤木さんもジャーナリストの仲間入りですね」

 それはもちろん親しみを込めたお祝いだということはよく分かっている。だが赤木雅子さんは、受賞を機会にマスコミの人たちに訴えたいことがある。それは「マスコミと遺族の関係」についてだ。2年半前、夫が亡くなった直後の恐怖は今も忘れないという。

 「家の周りに群れをなしてマスコミの人たちが集まっているんです。私の気持ちを無視して。それはまさにマスコミの塊でした。夫を亡くしたばかりの私には、恐怖でしかなかったんです。だから相澤さんにも最初は不信感と警戒心があって、夫の手記を託して公開しようと思うまでに2年間かかりました」

 「今はたくさんのマスコミの方に『私は真実が知りたい』という思いを伝えてもらって、とても感謝しています。だからこそ、なぜ最初にマスコミの恐怖を味わわなければならないのか。なんで遺族が弁護士を頼らなあかんのか。そこを訴えたいんです。『ありがとう、サンキュー』じゃ済まされないです」

 日本ジャーナリスト会議賞の授賞式は10月10日に行われる。赤木雅子さん自身は出席できないが、何らかの形でメッセージを伝えたいと考えている。

 (大阪日日新聞編集局長・記者、相澤冬樹)