「第3回反マスク集団が現れた ウォルマートに響いたサイレン」

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以下、朝日新聞デジタル版(2020/9/22 15:00)

 かつてないほど分断が進むアメリカは、どこへ向かうのか。大統領選挙の激戦州ペンシルベニア州の街ヨークで、「二つのアメリカ」の境界線上にある場所を見つけた。この地に住みながら、アメリカ社会の今を伝えるルポの3回目。(敬称略)

 ヨーク市の南端にある私の家は、市街地と郊外のほぼ境界線上にある。南に向かって車を走らせると、たちまち景色が一変する。

 丘の上の住宅地には、広い芝生の庭がある家が点在する。さらに車を走らせると、広大なトウモロコシ畑や、放牧された牛たちが草をはむ光景が広がる。このあたりは土地が豊かで、農業は主要産業の一つだ。

 もう一つ、すぐに目につく違いがある。市街地を離れ郊外に入っていくにつれ、家の庭にトランプ大統領のヤードサイン(庭に設置する小さな看板)が増えていくのだ。

 アメリカはすでに、政治的な「内戦」に陥りつつあるのではないか――。

 ここで車を走らせていると、そんな考えが頭をよぎる。

露店に並ぶトランプグッズ
 内戦が続く国では、主要都市は政権が押さえているものの、都市を出れば反政府勢力の支配地域が広がる、という場合がある。いまのアメリカの場合は、都市を押さえている民主党が野党という違いはあるものの、この辺り一帯は、そんな内戦状態の国をほうふつとさせる。

 共和党支持者が多い地域(赤)と民主党支持者が多い地域(青)を地図で見比べてみる。ペンシルベニア州の大半の面積を占めているのは、共和党支持の赤い地域だ。その中に、陸の孤島のように民主党支持が多い都市部が点在する。人口は都市部の方が多いので、州全体では民主党共和党が拮抗(きっこう)する(これはアメリカ全体でも同じだ)。青色になっているのは、このあたりで言えばヨーク、州都のハリスバーグ、ランカスターといった都市だ。

 ヨークの市街地を出れば、その先に広がっているのは広大な「トランプのアメリカ」だ。

 ある日、ヨークから近隣のゲティスバーグに向かう街道を走っていると、トランプの名前や写真をあしらった帽子やTシャツなどの品々を売る露店を見つけた。店をのぞくと、トランプ・グッズに交じって「ブルー・ライブズ・マター(青い命も大切だ)」と書かれた帽子も売っている。ブルーは警察官を意味する。「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命も大切だ)」に対抗するスローガンだ。

 2週間前に店を構えたという店主は「売れ行きはとてもいいですよ。大統領の支持率も上向いていると思いますね。私の感触では70%くらいまで上がっていますよ」と語った。

(後略)

(ペンシルベニア州ヨーク=大島隆)