「コロナ政府対応は「場当たり的だった」 民間臨調が検証」

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以下、朝日新聞デジタル版(2020年10月8日 13時00分)から。

 

 政府から独立した立場で日本の新型コロナウイルス感染症への対応を検証した「新型コロナ対応・民間臨時調査会」(委員長=小林喜光・三菱ケミカルホールディングス会長、政府規制改革推進会議議長)は8日、政府の対応は場当たり的だったが、結果的に、先進諸国の中では死亡率が低く経済の落ち込みも抑えられた、とする報告書を公表した。学校の一斉休校をめぐり、政治家同士の意思疎通の齟齬(そご)があったことも盛り込まれた。

 臨調を発足させたのは民間シンクタンク「アジア・パシフィック・イニシアティブ」(船橋洋一理事長)。国内で感染者が初めて確認された1月から約半年間の対応について、安倍晋三首相菅義偉官房長官西村康稔経済再生相、横倉義武日本医師会長のほか、内閣官房厚生労働省経済産業省などの行政官ら(いずれも当時)計83人に延べ101回のインタビューとヒアリングを行った。

 報告書には、2月27日に安倍氏が政府対策本部の会合で、「全国すべての小学校、中学校、高等学校、特別支援学校について、来週3月2日から春休みまで、臨時休業を行うよう」と突然の一斉休校を要請した際の顚末(てんまつ)が記された。

 それによると、会合前の午後1時半ごろ、萩生田光一文部科学相首相官邸で「本当にやるんですか、どこまでやるんですか」と安倍氏を問い詰めた。反対する萩生田氏に対し、安倍氏は「国の責任で全て対応する、それでもやった方がいいと思う」と述べたという。

 報告書はこの決定を、「学校給食学童保育の拡充の問題など教育現場に混乱をもたらした」だけでなく、その後の水際対策の遅れにも尾を引いたとみている。政府の専門家会議の関係者は聞き取りに、「疫学的にはほとんど意味がなかった」と述べている。

 萩生田氏は「正しかったか間違っていたかの結論はまだ持っていない」としながらも、「一斉休校を契機にマスクがマストになった。大げさなことをいえば、世界的な感染拡大の防止の一翼を日本国としては先陣を切って果たすことができた」と述べた。

 安倍氏は「難しい判断だった。あのときは二つの理由があった。学校でパニックが起きる、それを防ぐ。もう一つは感染した子どもたちを通じて、おじいちゃん、おばあちゃんが感染するリスクもあった」と振り返っている。

 安倍首相はまた、緊急事態を1カ月で脱出するためには「人と人との接触を最低で7割、極力8割削減」が必要として国民に協力を呼びかけた。ただ、この時「私としては8割削減ができればいいけれど、強制力がないので、そこが心配だった」との心情を吐露した。

 報告書は、様々な制約の中で場当たり的な判断の積み重ねであったとして、今後の流行への備えを訴えた。特措法などを早急に見直し、罰則などの強制力を持った規定を設けることや、公衆衛生のために経済的犠牲を強いられる企業や個人には一定の経済的補償をすべきだと提言した。新型コロナの流行期に、こうした対応を総括した報告書は世界的にも珍しいという。今後、英語版を作って世界に発信する予定という。

(姫野直行)