「札幌の五輪マラソンテスト、なぜ強行? 市民は冷ややか」

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以下、朝日新聞デジタル版(2021/5/2 6:00)から。

 8月に札幌市である東京五輪ラソン競技の運営体制を検証するためのテスト大会「北海道・札幌マラソンフェスティバル2021」が5日、同じコースを使って開かれる。しかし、主催者側からは十分な検証ができるかを不安視する声が上がり、市民にも「なぜいま強行するのか」と冷ややかなムードが広がる。

 「ぜひ自宅でテレビなどでの観戦をお願いし、沿道での観戦をお控えいただきたい」。札幌市の新型コロナの新規感染者数が170人と過去3番目の多さを記録した4月28日、秋元克広市長はテスト大会について、記者会見でこう訴えた。4月以降の感染急拡大を受け、市内の飲食店には4月27日~5月11日、午後9時までの営業時間の短縮要請が北海道から出されている。

 東京五輪パラリンピック大会組織委員会や道、札幌市などでつくる大会実行委は、10キロの部への市民ランナーの参加を中止。日本代表男女4人らエリート選手約120人が競うハーフマラソンなどに絞った。それでも実施にこだわるのは、本番と同じコースを使って警備や感染対策をテストできるからだ。森泰夫・組織委大会運営局次長は「運営準備に非常に重要」と説明した。

 五輪マラソンは市中心部の大通公園を発着点に、繁華街・ススキノや北海道大学など観光名所を駆け抜ける都市型コースだ。人や車の交通量が多いだけに、本番を想定したテストが欠かせない。沿道では市民ボランティアの協力を得て、プラカードを掲げるなどして「密」を防ぐ。スタートとゴール付近は広い範囲を立ち入り禁止にする。

 北海道警も「予行演習」と位置づけ、雑踏警備や交通規制を行う。テロ対策も検証するとみられる。

 しかし、五輪マラソンで沿道での観戦がどうなるかは決まっていない。秋元市長は28日の記者会見で、「観客をどのようにするのかという基本的な考え方のもとに、感染対策が出てこなければいけないので、その部分は今回はテストできない」と懸念を示した。また、五輪開催の是非を問われ、観客数など安全な大会を実現するための感染対策について「国民、市民が納得できるかが非常に重要」と答え、明言しなかった。

 コース沿いのカフェの店長、三浦周治さん(55)は時短要請に応じて午後9時に閉店している。「せっかくコロナを抑え込もうとしても、その結果が見えないうちにテスト大会をしたら意味がない」。ススキノの菓子店の女性(47)も「こんなに感染者が増えているのに、強行する理由がわからない」と憤る。

 五輪に向けた工事が進む大通公園を訪れた会社員の女性(24)は嘆いた。「コロナに振り回されて、五輪に関心がある人がどんどん減っている感じがする。世界から手放しで応援してもらえない時に五輪をやっても、選手が気の毒」(佐野楓、中野龍三、角拓哉、岡田昇)