"Beach Blanket Babylon goes to the stars"を見に行く

Transamerica Pyramid

 夜8時から始まる"Beach Blanket Babylon goes to the stars"を見に出かける。
 チャイナタウンの北のはずれのGreen st.にある会場*1に夜7時30分頃に到着。
 券を買う際に、Mason st.のBASSのおばさんに、”Early show or late show?”と聞かれたので、”Early show, please.”と答えておいたのだが、早いショーでも夜の8時開演である。遅いショーなら夜の10時30分の開演である。サンフランシスコの夜は長い。コンサートや劇が始まる時間帯も遅い。
 会場には丸テーブルが無造作に置いてあり、テーブルにはメニューと灰皿、それにステンドグラスに入ったろうそくがある。少し体格のいいウェイトレスが、「ショーの前に何か、いかがですか」というので、Burgundyのhalf litre ($3.50)を頼むと、プラスチック製の安いコップを1つ置いて、「すぐ来ます」と言う。やり過ぎかもしれないが、チップを$0.50渡すと、”Thank you. I appreciate it. (I hope you will) Enjoy the show.”と言ってくれた。
 日本にはチップの習慣がないのでやりづらいが、チップについてはいろいろな考え方があるだろう。ひとつ確かなことは、チップを見込んで仕事をしている人は愛想がいいということだ。チップに関係するから当たり前といえば当たり前なのだが、愛想のないウェイトレスよりは余程いい。
 また、観劇の前や劇の最中に何か飲めるというのは、サンフランシスコでは当たり前だが、日本ではまだまだない習慣である*2。シリアスなものの場合は具合が悪いかもしれないが、コメディショーの場合は悪い習慣ではない。私は好きだ。
 今日の劇も、座席がきちんと決まっておらず、係員が、あるいは客が勝手に席を動かしている。私のように一人でこうしたところに来るというほうが異常で、みなさんカップルかグループで来る。丸テーブルに3人がけだったので、あとからカップルが座わる。このカップルがうるさい。多少の酒も手伝って、よく喋る。前の8人くらいのグループでは、自己紹介・他己紹介が始まった。私は学生時代より新劇を見ることがあったが、日本の新劇を見る雰囲気とはまるで違う。
 さて8時を8分ほどまわって、ショーが始まった。
 この内容をなんと形容してよいものか、ドタバタの学芸会である。
 一応ミュージカルで、歌う曲は、Beach Boys, Billy Joel, Bee Gees、Saturday Night Feverの"Stayin’ Alive"、「ショーほど素敵なものはない」、ライザ・ミネリの"Cabaret"、バニー・マニローなど、私も良く知っている曲を、次から次へと歌いまくる。
 話の筋は、White Snow Princess(白雪姫)が、プリンスを探しにいく途中で、いろいろな人やいろいろなものに出会うという単純なもので、その合間にギャグと衣装を見せるショーなのだが、このギャグといったら、映画・劇・テレビをパロディ化したもので、質は高くなく、面白くなかった。会場は爆笑の渦で、近くの男など、飛び上がって小躍りして喜んでいる。それがまた私にとっては興醒めである。
 ただ、Beach Boysなど、社会風俗として入り込んでいること、テレビのパロディは共通なものがあるということが収穫といえば収穫であった。洗剤のTideも、洗剤の箱を被って歌う。West Side Storyの"Cool"という歌に合わせて、タバコのKoolの箱を被った人間が登場し、あなたの愛はtrueかという歌が続くと、会場が期待するように、箱のTrueが出てくるといったおバカなショーだった。最後にWhite Snow Princessがジョン・トラボルタを真似た青年と出会い、サンフランシスコを賛美するとき、白雪姫がかぶる帽子が圧巻で、サンフランシスコの町並みをのせた馬鹿でかい帽子で、電気が点灯するといった実にばかばかしいものだった。90分くらいのショーだったが、サンフランシスコ賛美のとき、会場は大騒ぎで、実にこの人たちはサンフランシスコを愛しているのだなと実感した*3。Montgomery st.にあるトランスアメリカのピラミッドは白雪姫の頭の上でひときわ目立ち、輝いていた。東京で言えば、東京タワーのような存在なのかと実感した次第である。
 帰り道、サンフランシスコの夜の街を歩くと、みなさんカップルが多い。俺のように、一人で歩いている男というものは異常な感じがする。

*1:私が行った箱はClub Fugaziだと思う。http://en.wikipedia.org/wiki/Club_Fugazi後年、Beach Blanket Babylonはロングランとなり、褒め称える意味で、Green st.もBeach Blanket Babylonにちなんだ名前になったようだ。

*2:後年、日本もこうした習慣を学び、日本でも広がってきている。

*3:後年、インターネットで調べてみたら、このショーは30年近くロングランを続けているようだ。http://en.wikipedia.org/wiki/Beach_Blanket_Babylon