広大な英語文化圏内での移動は比較的容易であるようだ

ネルソンからロトルアへ

 モーテルのレセプション隣の部屋につながる入り口に荷物が多く到着している。チェックアウトの際に、この荷物は何なのか奥さんに聞くと、宿に泊まっているカナダの若者たち宛のものだという。カナダから来ているというこの若者たちについて、奥さんのエリカ(仮名)さんと話をした。
 この若者たちはカナダからニュージーランドに来ているわけだが、果物摘みで9時から5時までフルタイムで働いているという。この地域は果物栽培が盛んだから、収穫期には労働力が必要なわけだ。働いてお金がある程度たまったら、旅行に出かけるらしい。この若者たちは中産階層で、カナダにいる両親たちは子どものニュージーランド行きのために金銭的援助はしないのが普通だという。
 ニュージーランドでは、若いときに海外に旅する若者が多いと聞いていた。日本の静岡県ほどの人口が北海道を除いた本州、四国、九州を合わせたほどの場所にちらばっているような人口の少ない国がニュージーランドである。あまりに小さな世界ということになるのだろう。ニュージーランドから海外に旅たつ若者が多いのもうなずける。この奥さんのエリカさんも、若いときにイギリスに行ったことがあるという。そうした場合、どこに行くかは本人の希望次第で、金銭的援助をしない両親が普通だそうだ*1
 今回の旅行で、いろいろな人たちと話をする機会を得ているが、英語文化圏といえば、イングランドスコットランドウェールズというグレートブリテン島。そしてアイルランドオセアニアでは、オーストラリアとこのニュージーランド。そしてカナダ、アメリカ合州国と範囲が広い。そもそもイングランド語という一地域のコトバがスコットランドウェールズを侵攻し、植民地アイルランドに広められていったのである。そして移民につぐ移民。基本的には侵略と移民の歴史で広がったこうした英語文化圏は実に広大である。彼らはタフで、文化交流も盛んで、情報量も多い。いろいろな英語があるといっても基本的に英語だから、コミュニケーションをとるのには問題がない。だからカナダからニュージーランドに旅するとか、ニュージーランドからイギリスに出かけたってコミュニケーション的には問題がない。政治的・文化的にいえば、大英帝国連邦、Commonwealth of Nationsなのだ。だから、彼らのこうした行動、つまり英語文化圏内でのちょっとした移動なんて、彼らにとっては挑戦的でも何でもないのだろう。英語が通じるという限りにおいて、英語文化圏では、国の国境(ボーダー)がそのまま実質的なボーダーにはならない。言語的なことだけに限っていえば、それは英語文化圏の範囲にまで拡大される。

*1:ニュージーランド―キウイたちの自然派ライフ (ワールド・カルチャーガイド)」によれば、18歳頃から20歳前半にかけて海外体験する若者が多いのだが、これをOE(overseas experience)と呼んでいるようだ。