中華の模擬店で初めて昼飯を注文してみた

大学構内の中華の模擬店

 ワイカト大学(The University of Waikato)の昼飯は、アジア料理を出すカフェで済ませることが圧倒的に多いのだけれど、たまに通路に中華の模擬店が7軒ほど出る。少しだけ品数の多い日本の学園祭の模擬店みたいなものだ。
 今まで食べたことはなかったのだけれど、麺類、ご飯類、中華のおかず、饅頭、餃子と、いろいろあって結構人気だ。昨日初めて、この模擬店のひとつに並んでみた。
 夫婦らしい中国人と、その息子らしい中国人が三人で切り盛りをしている。コミュニケーションは中国語でとっている。中国語の響きが結構けたたましい。
 肉団子や牛肉の炒め物など、惣菜が何種類か並べてあって、よくある日本の弁当箱のような容器に、好きなものを入れて、電子レンジで温めている。前に注文した白人女性が、「私が注文したものが電子レンジに入ったままなんですけど」と訴えている。「ごめんなさいね」とおばさんに言われたせいか、「大丈夫ですよ」と客の方はあくまでも優しい。ようやく食べ物を手にした彼女と眼が合った際に、微笑んでくれたので私も微笑み返す。袖すり合うのも何かの縁と、まぁしょうがないよねといった気持ちを共有しているだけなのだけど。
 私が順番を待っていると、中国人の女子学生数名が列に入ってきて、「この惣菜は何」と中国語で聞き始めた。順番を割り込んできたわけではないけれど、これが結構けたたましく、マナー的にも問題を感じるが、我慢して自分の順番を待つ。
 メニューは立て看板に示されているので、この中から、スパイシーな牛肉ヌードルを注文してみた。値段は、4ドル50セントだというから、315円くらいか。
 さらに順番を待ち続けていると、前の白人男性の注文は饅頭だったのだけれど、「少し時間がかかりますけど、いいですか」と言われて、「それじゃ、また」と、彼は注文を諦めて、残念そうに行ってしまった。
 私の前にいて並んでいる別のアジア系の女学生は、「シーフードヌードルはできますか」とイギリス語で聞いている。麺担当は父親らしいのだけれど、その父親はイギリス語で話しかけられると、息子に中国語で伝えて、息子が応対している。どうやらこの両親はイギリス語を話せないらしい。
 私も中国語はできないので、イギリス語で話しかけると、父親らしき中国人がやはり息子に話しかけることになる。
 私の前にいる彼女に、「シーフードヌードルは、いま材料がこちらに向かっているので、ちょっと時間がかかります」と息子らしき男性が説明している。そのアジア系の女性は、どうしてもシーフードヌードルが食べたいらしく、「今こちらに向かっているって、どれくらいの時間ですか」と、結構しつこい。息子は「今向かっているのは確かなんだけど、どれくらいかは断言できない。多分10分くらいかな」と答えている。そのアジア系の女性はようやくあきらめたらしく、テーブルの上にある具を指し示し始めた。父親らしき麺担当のおやじさんが、その具をボウルに入れて、ぐらぐら煮えているお湯の中に入れ、ゆで始める。
 そうこうしているうちに、息子の奥さんらしき女性が到着したらしく、シーフードを運び入れに来た。テーブルの上にはすでにスペースがないものだから、息子がテーブルの上の整理を始める。この間に中国語が飛び交うことになるのだが、家族内で、なんか口論をしているように聞こえる状況だ。
 先のアジア系女性は、20ドル紙幣を父親に渡したのだが、釣銭がないのか、父親は右往左往していて、挙句の果てに持ち場の調理場を離れてしまった。
 アジア系の女性は20ドル紙幣を渡したままだから、どうなっているのと、息子にイギリス語で話しかける。息子は、「紙幣をくずしに行っただけだから。ちょっと待ってて」と説明する。
 こうした喧騒の中で、ようやく私もスパイシービーフヌードルを手に入れることに成功した。
 これを、大学構内のコンクリート階段のところで食べてみると、ビーフはうまいが、味はあまりスパイシーではない。例の息子が「辛さは、かなり辛いのがいいのか、普通がいいのか」というので、普通にしたのだが、今度注文するときは、かなり辛いものでも大丈夫そうだ。
 味は悪くないのだけれど、電子レンジの具合か、レンジ内に放置されたせいか、スープがぬるいのがなんとも致命傷だ。
 温め直してと言いにいこうかとも思ったけれど、あのけたたましさをもう一度聞かされるかと思うとやめにした。
 私の観察では、あの店はメニューが多すぎるのと、客の注文を聞きすぎるのが問題だ。
 これで勝負するというメニューをしぼった方がいいと思うのだけれど、それでは客が離れてしまうのかもしれない。
 メニューの豊富さや個人のさまざまな嗜好性に対応できる体制ならいいのだけれど、あの状況ではちょいと無理だ。