学校でマオリ語を喋ると昔は鞭で叩かれたものよ

 レガッタを見ながら、私は、ヘミのお母さんにマオリ語の歴史について、少しだけ聴いてみた。
 家庭では、マオリ語で育てられたが、学校では、英語だったと彼女は言った。マオリ語を話すと、鞭で叩かれたものだと続けた。
 教師は意地悪で、マオリの子どもたちに賢くなってほしくないような気がしたという。
 ただ、白人とマオリの子どもたちどうしは、バスケットボールや、水遊びなど、問題なく遊んでいたようだ。
 二日前に、ネイピア在住のトータルエマージョン学校の教師を、例のワイカト大学(The University of Waikato)の教授に紹介してもらったのだが、このトータルエマージョンの教師の話でも、マオリ語を学校で話すと鞭で叩かれたという話をしていた。
 マオリのコミュニティ内では、マオリ語を話したとしても、マオリのコミュニティの外では、英語の世界に徐々に包囲されてきたことだろう。生活をするためには英語ができないといけないという環境に、徐々に変化していったことだろう。
 マオリの両親が、子どもの将来のためには、英語でと、否応なしに、それ以外の選択肢を取れないかたちで、子どもたちに英語を学ばせていったであろうと想像することはそんなに難しいことではない。
 こうして学校教育では、英語一元化がすすみ、マオリ語を学校で話すことが不可能になった。
 ヘミのお母さんは、なんで学校でマオリ語を話してはいけないのかなと、子ども心に、素朴にそう思ったそうだ。